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Fukaseの歌詞がすごい。《朝が来たように見えたけど/私たちが自転をしただけなのよね》《幸せが何かなんて笑わせないで/それはセロトニンよ》……“Romantic”という曲名を根底からひっくり返すような「現実」を歌いながら、それでも何かを信じ、何かを願ってしまうこの曲の主人公。その「それでも」という心に、人間が抱くロマンのなんたるかが詰まっていると思う。そして取りも直さず、そんなロマンティックな人の姿こそ、SEKAI NO OWARIがずっと描き続けてきたものだ。現実が時にロクでもないものであることも、生きていることのしんどさも、誰かを愛することの悲しさも知ったうえで、「それでも」と願い、祈り、肯定するというシビアな行為。アートワークには鏡に口紅で書かれた「Romantic is Dead」という言葉が写っているが、その写真の通り、「is Dead」を二重線で打ち消すのがきっとポップミュージックの役割なのだ。歌に寄り添うように軽やかに鳴り響くSaoriのピアノもNakajinのギターもとてもいい。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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