『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
昨年、フライング・ロータス主宰のBrainfeederと契約を結び、第1弾楽曲としてリリースされた“口の花火”は衝撃だった。その際に長谷川が「これから行っていくべき」ものとして掲げたのが「わたし自身の身体による音楽の撹乱であり、首尾一貫していないものの、混沌の露呈」だった。このアルバムはそれを強烈に体現する。長谷川の身体を通して創られ世に放たれたエレクトロミュージックが、リスナーの身体に起こすまさしく「撹乱」。それを今感じている。同じ曲を聴いて、昨日は「ここがいい」と思えた景色に今日は出会えないような、あるいは凄まじく攻撃的なビートが翌日には凪のように響いて心を癒す不思議な感覚。録音音源が等しく再現性を保つという当たり前のことすら疑いたくなるほど、この作品はひとつの意味に終着するのを拒む。“ボーイズ・テクスチャー”の変幻するボーカルが、そのカオスこそ是と「宣言」するように響いて、まるで音楽とは何か、ポップとは何かを問い直されているよう。必聴作品。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら