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恋人にせよ親子にせよ幾年かをともに過ごした大切な人(子)が自分のもとから離れ去るとき、自分との日々がその子の幸福な未来のための糧となれと願う――その切実な思いは愛あればこそだ。が、そこには送り出す側の「自分」が主語のエゴが少なからず混じってはいないか。“新しい恋人達に”を聴いてハッとした。《誰の人生だ》と何度も自らに問いかけ、《真白な君の未来を/真白なまま/君が色を塗れるように》と送り出すこの曲は、すべてのエゴを捨てた先にある真の無償の愛が描かれていると思えたのだ。この曲を改めてCDシングルとしてリリースするにあたり、カップリング曲“楽園の地図”も収録される。これがまたすこぶるいいのだ。表題曲とは対照的にフレッシュに躍動するバンドサウンドがリアルで愛らしいラブソングを描き出す。それは「今」「ここ」でふたりが感じている確かな愛の一場面。ここに描かれているのはまさに一組の「新しい恋人達」なのかもしれず、この2曲で織りなす作品はまるで一編の小説のよう。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)
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