新たな世界へ小舟を漕ぐ

ヨンシー&アレックス『ライスボーイ・スリープス』
2009年07月22日発売
ALBUM
ヨンシー&アレックス ライスボーイ・スリープス
シガー・ロスの作品とは、その一連のアートワークに象徴的なように、胎児が子供に、そして少年が青年となり自分達の世界の外側へと駆け出していく姿にバンド自身の成長や変化の軌跡を重ねた「物語」の記録だった。去年の最新作『残響』は、その物語が新たな章を迎えたことを祝福し、つまり物語はこれからも続くことを高らかに歌うようなポジティブな光に溢れた作品だった。であるとするなら、このヨンシーがパートナーのアレックス・ソマーズと始めた新ユニット、ライスボーイ・スリープスは、その物語においてどう位置付けられるものなのか。レッド・ホット企画のコンピ『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』への提供曲も含む、本作がデビュー・アルバムとなる。

音の基調となる世界感はシガー・ロスと大きくは変わらない。エレクトロニクスを軸に、ピアノやベル、ストリングスなど様々な楽器やコーラスを織り重ね、ベールのように眩く濃密なサウンドスケープを創り上げる。例えばボーズ・オブ・カナダやフェネズの『エンドレス・サマー』にも感触は近い。シガー・ロスの音楽が大いなる祝祭や祈りに包まれるような体験だとするなら、もはやそれ自体が福音であるかのような深い陶酔と高揚感がこの音楽には横溢する。今作はアイスランドの他にハワイでも一部制作されたようで、そうした環境のせいもあるのかもしれない。今作の後には、ヨンシーのソロ、さらに来年には早くもシガー・ロスの新作がリリースされるとも聞く。ともあれ、ヨンシーとバンドがその新たな物語をかつてなく力強い足取りで踏み出そうとしているのは確か。今作はその導きの灯り。(天井潤之介)
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