“遊び”を尽くしたエールの新章

エール『Love 2』
2009年09月30日発売
ALBUM
エール Love 2
2年半ぶりの5作目。新設した自身のスタジオで制作された、初のセルフ・プロデュース作という。そうした環境の変化が刺激したのか、今作は近作とは趣を変えサウンド・パレットの賑やかなポップ作となった。前作『ポケット・シンフォニー』は、琴や日本の伝統楽器を用いるなどミニマルで静的なムードも印象的だったが、今作はいい意味で統一感がなく楽曲毎の個性が際立つ。ウォーミーなアナログシンセや浮遊感溢れる音響美などエール節は健在ながら、チルアウトなアフロ・ビートや、アリス・コルトレーンの影響というジャジーなナイト・トロピカリアなど、随所に遊びが利いてて騒々しい。「生命力とエネルギーが感じられるものを作ろうとした」とJBも語るように、エレガンスと猥雑さ、メランコリーと放蕩感が織りなすダイナミックなエールを堪能できる。バンドの第2章という触れ込みもあった前作だが、『テンサウザンズヘルツレジェンド』にも通じる振り切れた今作こそ彼らの新章を告げるにふさわしい。ジャスティスやエド・バンガー周辺など新しい世代の台頭著しいフランスだが、今作は改めて彼らの存在感を示す一枚だろう。(天井潤之介)
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