「誤解」も解釈のひとつである

NICO Touches the Walls『かけら―総べての想いたちへ―』
2009年11月04日発売
SINGLE
NICO Touches the Walls かけら―総べての想いたちへ―
TVドラマの主題歌に決定したNICOのニュー・シングルは、メロディアスなピアノの旋律とディストーション・ギターのイントロに導かれて幕を開ける美しい一曲。肌寒い、澄んだ空気を巻いて流れ出す時間を捉えた、これからの季節の街の風景にもピッタリのサウンドである。移りゆく景色と雑多なコミュニケーションの交錯とが混ざり合って、我々の記憶は紡ぎ出される。風の体感温度と感情は、歴史書に記されることはない。凄いのは、光村が《伝わったらいいのに 間違いでもいいのに/今届けたいんだ このフレーズを君に》と歌っていることだ。無論、彼らはいい加減なメロディと言葉を投げ掛けてくるようなバンドではない。が、光村はあらゆる対話の中で、誤解されることを恐れず、その対話の先で新しく生まれ落ちるものにこそ思いを馳せている。この強烈なコミュニケーション願望こそが、ロックの本質だ。

表題曲よりも幻想的な美しさを誇るのが、カップリングの“Aurora(Prelude)”。この曲のアウトロが、新しい物語の到来を告げつつフェイド・アウトする。新作アルバムへのプレリュードか。(小池宏和)
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