テン年代が始まる

ヴァンパイア・ウィークエンド『コントラ』
2010年01月13日発売
ALBUM
ヴァンパイア・ウィークエンド コントラ
エズラがインタビューなどで語ったところによれば、ジャケットの女性の写真は、1983年にニューヨークのドキュメンタリーとして撮影されたものだという。そして、この写真をジャケットに採用しようと思ったのは、パッと見て、彼女が何歳か、わからなかったからだそうだ。その年齢不詳な感じこそが、このアルバムには合っていたという。

全世界のセールスを累計すると100万枚を超えることになった画期的なファーストから2年、最高のセカンドが完成したと言っていいだろう。前作のときから気になっていたのは、彼らのポップネスは一体どこに端を発するものなんだろう?ということだったのだが、本作を聴いて、ようやく見えてきた気がする。今回のジャケットのエピソードが象徴的だが、ヴァンパイア・ウィークエンドをヴァンパイア・ウィークエンドたらしめているのは、彷徨っているという感覚である。どこにも帰属する場所を見つけることができない。そうした心境自体は珍しいものでもなんでもないし、実際に倦怠や悲劇としても鳴らされてきた。けれど、彼らは、それをどこにでも向かうことのできる可能性として反転する。彼らが鳴らすポップネスとは、その可能性である。アフロ・ビートやレゲエ、エレクトロ、パンクがスマートに入り乱れるサウンドもだからだろう。彼らは生粋のパンクスになれもしなければ、民族音楽の求道者になれもしなかった。アメリカに住む中産階級の白人として様々な音楽にアクセスする。そのアイデンティティが音になっている。(古川琢也)
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