あの透明感と少年「未完成」であることを矜持に、顔をくしゃくしゃにして世界にわけもわからず体当たりするmonobrightが好きだ。ハラハラするし、呆れるし、時にものすごく痛いけど、なんか胸がじんとする。けれども、この一点突破な方法論で果たしてどこまで行けるのだろう? デビュー1年を迎えて、少々心配だったのも事実。しかし彼らは、その「未完成」さを桃野陽介という個人の特殊性に落とし込むのではなく(それはそれで面白いので続けて欲しいが)、誰しもが共感できる「少年性」というイコンに落とし込むことで大きな普遍性を獲得した。それがこの全曲少年をテーマにしたミニアルバムだ。タイトル曲は内田けんじ監督映画『アフタースクール』の主題歌として初の書き下ろし。特に素晴らしいのが“夏メロマンティック”と“旅立ちと少年”だ。桃野は幼少期、酪農を営んでいた北海道の実家の、周囲に張り巡らされた有刺鉄線に飛び込んで血を出しながら泣いていたそうだが、「そんな何も知らない少年の心に戻るのではなく、それを現在に持ってきたい」とインタビューで語っていた。それが見事に結実した前述の2曲はマジで名曲。泣けます。(井上貴子)