「一瞬」を切り取る技術

エレファントカシマシ『幸せよ、この指にとまれ』
エレファントカシマシ 幸せよ、この指にとまれ
最近のエレファントカシマシは、青春の光景を歌うわけではない。登場するのは語りつくせぬ過去を抱え、茫漠とした未来を前にして立ち尽くす壮年の男。カップリング“赤き空よ!”を含む今回のシングルの主人公も例外ではないが、その音楽は、あまたの青春ソングに負けぬほど瑞々しい。そして聴き手の胸に、ほんのりと甘い切なささえも残す。それは今のエレファントカシマシの歌が、優れた青春ソングと同じように、ある「一瞬」を鮮やかに切り取ったものだからだろう。表題曲では、過去と未来に思いを巡らせて歩く男が「幸せ」という言葉に胸躍らせる一瞬を、“赤き空よ!”では、夕暮れの空の下を歩いている男の横顔を、宮本一流のハードボイルドな筆で映し出す。その描写こそ作品の核であり、そこに伸びやかなメロディと、足腰の強いバンド演奏が加われば、音楽による抒情詩ともいうべき楽曲となる。特に、“赤き空よ!”のすばらしさは強調しておきたい。同じく初出がシングルのカップリングだった“DJ in my life”のように、ライブなどで長く歌い継がれる名曲となる予感がする。(神谷弘一)
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