ラップ的歌唱を取り入れた“新世紀のラブソング”、原作者の歌詞を基に書き下ろされた“ソラニン”と、新要素の導入に積極的な姿勢を見せるアジカン。魔法の鍵で次々と禁断の扉を開くかのようなその冒険的手つきは、新曲“迷子犬と雨のビート”に、管楽器とシャッフルビートの導入という新機軸をもたらした。いやもう導入どころか、跳ねるビートがホーンを連れて全体を引っ張ってゆくような楽曲なのだが、しかしこれが彼らにしか絶対に表現し得ぬ真っ直ぐな歌を見事に導き出している。また繰り返される日々の大切さを綴った歌詞からも、足もとの確かさと本質の揺るぎなさを感じ取ることができる。ワクワクが詰まっているのに、重心が一切ブレていない。様々な要素を取り入れるというのは本来、それを贅肉にしてお腹につけることではなく、もっと中心にある骨や筋肉を強化することであるというのを、今の彼らほど如実に感じさせてくれるバンドは他にない。まるで少年のように背を伸ばし逞しくなってゆく、新たな成長期へと突入したアジカンの全貌は、この先に待つアルバムで明らかになるはずだ。(井上智公)