最近のくるりは、自分たちの表現と世間のあいだに、昔なら必要だった色んなフィルターをどんどん置かなくなっている。そのことで生まれる無防備さも、違和感も、全部楽しむ余裕があるからだ。そして結果的に、彼らの曲からはシンプルな「生活」の匂いが色濃く立ち上るようになった。キャリア初の両A面シングルとなった今作でも、曲の中心にあるのは、パンにピーナッツバターを塗って食べたり、シャツを洗ったり、そういう日常のふとした一場面である。そして、そういうありふれた出発点から歌っているのに、メロディと言葉の純度の高さは、まさに珠玉としか言いようがない。これが当たり前のようにできてしまうから、くるりはやっぱりくるりなのである。特に“魔法のじゅうたん”の、アコギとドラムが優しく響きあうオーガニックなアレンジに支えられたメロディの高揚感の切なさは、くるりの名曲の中でも、屈指の素晴らしさだと僕は思う。あの衝撃の民謡ブルース“東京レレレのレ”とこの曲との、圧倒的な振れ幅の中に今のくるりの自由さはある。ますますアルバムへの期待が高くなってきた。(松村耕太朗)