終りでも始まりでもない、ただ一筋の道

ブランドン・フラワーズ『フラミンゴ』
2010年09月08日発売
ALBUM
ブランドン・フラワーズ フラミンゴ
キラーズ活動一時休止を経てリリースされるブランドン・フラワーズの初ソロ・アルバム。バンドの活動休止を受けてのソロ作は得てして「バンドではできなかったこと」や「本当の自分」を発表する場となり、だからこそバンドの活動休止とソロ作のリリースは「方向性の違い」を露わにし、バンド活動自体のフェイドアウトを誘発するきっかけとなることも多々ある。しかし本作はその手の反動的ソロとは全く異なる意味を持つ一枚だ。これは、キラーズである。本来ならキラーズとしてブランドンも作りたかったのだろう、完全に地続きの一枚である。そして本作とキラーズを繋げるものとはつまり、彼らの故郷ラスベガスである。 

『デイ&エイジ』のセッションと並行して書かれた楽曲に端を発する本作は、『デイ&エイジ』と背中合わせの作品であり、ブランドンの視点で固定され語られる物語は、キラーズの作品中でも最も顕著にベガスへの想いが綴られた『サムズ・タウン』のさらなる自叙伝バージョンと言ってもいいんじゃないだろうか。ダニエル・ラノワ、ブレンダン・オブライエン、スチュワート・プライスと豪華絢爛なブレーンが名を連ねているだけに、シンプル&ロウ・キーに流れがちなソロ作の類型ともこれまた全く異なるハイブロウな音響、キラーズらしいスケール感がしっかりキープされている。4ピースのバンド・サウンドの代わりにサウンドを華麗にドライブさせるのはストリングスだ。何と言ったって彼の故郷はベガスなのだ。しみったれた郷愁なんかに逃げるわけがないのだ。あの街に育った男のプライドが、キラーズと等しく本作を超級ポップたらしめている。(粉川しの)
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