アンバランス、最強のバランス

スレイ・ベルズ『トリーツ』
2010年10月13日発売
ALBUM
スレイ・ベルズ トリーツ
スパイク・ジョーンズとM.I.A.のお気に入りとして注目を集めるやいなや、ネット時代ならではのスピードで世界中へと広まっていったスレイ・ベルズ。デレクのヘヴィなディストーションでぶっ飛ばされたと思ったら、アレクシスのあくまで自然体な激甘ボーカルがどろりと流れ込んでくるオープニングが決定的だ。ロック・リスナーならば、今の嗜好がどうであれ一度は通るであろう(もっとも90年代を通過しているリスナーに限るかもしれないが)パーティー・ロックのエクストリームなヘヴィネスと、インディ・ポップの繊細さ。肉食VS草食もしくは水VS油な超極端のふたつが出会うときの爆発力とは凄まじい。こういうことを楽曲単位とか、ちょこちょことやっているアクトはいなくはないが、ここまで徹底したスケールであっけらかんと鳴らすバンドはやっぱりいなかった。

たとえば、ポップであろうとしないのにポップたりえてしまう(ジョアンナ・ニューサムのように)ことがすごい攻撃力を備えているのと同じように、「破壊するだけ」を目的としないサウンドの破壊力とは想像を絶するものだ。スレイ・ベルズの場合は、両極端なものを組み合わせるというアイディアそのものに対しては自覚的でこそあれ、メインストリームのポップを「敵」とみなすのではなくパロディ半分リスペクトする、そんな余裕ある世代(実年齢とは関係なしに)感覚が活きている。顔の見えないチアガールさながら、ポップ・ミュージックの匿名性を逆手にとってロックしてみせる。今年の新人勢のなかで、もっとも革新的なバンドのひとつ。(羽鳥麻美)
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