DIYで昇華したホラーズ・サウンド

ザ・ホラーズ『スカイング』
2011年07月06日発売
ALBUM
ザ・ホラーズ スカイング
09年の前作『プライマリー・カラーズ』のプロデューサーがポーティスヘッドのジェフ・バーロウだと知って驚いたのを覚えている。当時のジェフは『サード』や主宰レーベルの作品にも顕著だがドローンやドゥーム・メタルにハマっていた。なので初期のゴス・ガレージからサイケデリックな音響性を増した前作の変化にピンとこなかったのだ。けれどあらためて作品を聴き返すと、シューゲイズ気味に引き摺るギター・ノイズやそのフェティッシュな感触など、ジェフの趣向性を窺わす特徴に気づく。思えば「ノイズ」を仲介したガレージからサイケデリックへという道筋はマイブラと重なる部分もなくない。そしてニュー・アルバム『スカイング』は、その前作における変化を洗練させた内容と言える。

“ノイジー”な印象は後退したが、華麗なギター・ワークやシンセが飾る音響的なテクスチャーは、前作の路線を発展させたものだろう。それに比例して、よりメロディアスに、ヴォーカルに軸を置かれた印象を受けるソングライティングは、今作の大きな聴かせどころと言える。個人的にはスウェードを連想する場面もあり、あるいはM9のような「ノイズ」と「歌/ポップ」がサイケデリックにうねるアート・ロックなど、前2作を踏まえた上での深化を随所に感じることができる。3作目で初のセルフ・プロデュース。ミックスは外部だが、どのシーンや時流にも媚びない“ホラーズ・サウンド”を獲得できた手応えを得ることができたのではないか。そして、この成果がライヴでどう反映されるのか。来月のサマーソニックのステージが本当に楽しみになってきた。(天井潤之介)
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