やっぱりこのバンドは信用できる。約4年ぶり、待望の新EPを聴いて彼らのブレなさ加減は改めて希少だと思った。デビューから15年が経ち、ホラーズも既にベテラン・バンドの域に差し掛かりつつある。
00年代半ば、刹那のゴス・パンクを引っさげ登場した彼らには仇花感すら漂っていたが、結局あの時期のインディ・バンドで今も生き残っているのはホラーズを含めごく僅かしかいない。時流に影響されず、頑固一徹の探求の先でサイケデリック、コズミック・ポップ、クラウトロックにシューゲイザーと辺境を開拓していった彼らは、孤高のカルト・バンドの地位を確立して現在に至る。
ポール・エプワースと組んだ前作『V』がホラーズ史上最もポップに開けたものだったのとは対照的に、新曲を3曲収録した本EPはバンドの最もプリミティブな要素を純粋抽出した、鋭利な一作となっている。タイトル・トラックと“Whiplash”は重量級のインダストリアルで、特に“Lout”は各パートの繋がりを粉々に粉砕していくノイズ・ギターといい、オカルトティックなファリスのボーカルといい、『ストレンジ・ハウス』期に回帰したような最高の仕上がり。
一方の“Org”はエイフェックス・ツインを彷彿させるテクノで、無数の棘を持つ無数の粒が不規則に跳ね躍るような凶暴なビートが痛い快感だ。初期作に近いサウンドになったとは言え、ライブ・レコーディングの体調次第の出たとこ勝負だった『ストレンジ〜』と比較すると、パンデミックの最中で必然的に全作業がリモートになったのも影響しているのだろう、本作では徹底的に練磨し、強化した素材を元に起爆性をプログラミングした確信犯で、流石に15年の熟練は伊達ではない。この勢いで是非ともフル・アルバムのリリースをお願いしたいところ。(粉川しの)
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