正式なソロ・デビューアルバムから1年強、間にSAKEROCKの新作を挟みながら、星野源のニューアルバムが届いた。かつて自身の歌声に不思議なほどの強いコンプレックスを抱いていた彼だが、ソロ・デビュー後に寄せられた絶賛の声の数々は自信に繋がったろうか。先にシングルとして届けられた“くだらないの中に”をはじめ、今作も生活臭を含んだ人肌の温度で届けられる彼の死生観と姿勢表明が、詰め込まれている。なんて濃密な歌を、なんて楽々と歌えてしまうのだろう。
ピアノやフリューゲルホルン、ストリングスなどを交えたアコースティックなアレンジは豊饒で、前作以上にSAKEROCKと相通ずるユニークなファンク感、スウィング感による躍動を感じる。そんな中で歌われるのが保険営業マンの辛い毎日だったり、胸が一杯になるお墓参りの歌だったりする。なぜだ。喩えウキウキワクワクとではなくとも、我々は生きているからだ。「アーティスティックな語部としての星野源」は12曲目“日常”で今作を結んでいる気がするが、最後の“予想”で「人柄としての星野源」が顔を覗かせるのもいい。(小池宏和)
星野源の歌が、弾んでいる
星野源『エピソード』
2011年09月28日発売
2011年09月28日発売
ALBUM