世界を閉じ込める3ピース

Ain Figremin『クオリアの浴槽』
2011年10月05日発売
ALBUM
Ain Figremin クオリアの浴槽
全8曲中、7曲の歌に《僕》と《君》が登場するのだが、《君》の存在があまりにも透明すぎる。《君》は、腕に傷を作ったり、泣きわめいたり、死んだりするのだが、その《君》が、果たして何者であるのか、断片すらも掴めない。仮にこれが小説や映画や歌謡曲であれば、問答無用で失格なのだろうが、ことロックにおいては許される。「世界とは、自分の意識の中にのみ存在する」という独我論のマグマは、ロックの歴史を常に塗り替えてきたからだ。バンド名には「異彩を放つ者」という意味が込められている。アマチュア・アーティスト・コンテスト「RO69JACK 10/11」で優勝したこのAin Figreminは、この1stアルバムで、自己という名の密室そのものを、極限まで表に晒している。そして、その複雑で内省的な歌詞とは反比例しているポップでシンプルなメロディは、外界とのコンタクトを可能にする唯一の「通路」だ。密室は外から傍観しても、中で何が起きているのか全く理解できない。飛び込めるか、飛び込めないかで、彼らの評価は180度変わるだろう。前者である自分は、断固このバンドを支持する。(徳山弘基)
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