死を恐れない人間はいない。しかし、ひとつのことを追求することで、死に背中を追われて生きるのではなく、死ぬまで全力で生きるのみという肯定的な感覚を手に入れることができる。ONE OK ROCKは、前作『Nicheシンドローム』で、その感覚を自分たちにしかできないロックのストロングスタイルとして確立し、さらに今作『残響リファレンス』では他のバンドの意義を問うくらい攻撃的なフォルムに進化させた。この若さでこの成長速度でこの正しさ、一気にこれからのロックを担う場所に躍り出た。(古河晋)
その歌声は全世代を圧倒する
同世代と共に歩み、そのリアリティを作品に反映させてきたバンドが、ある瞬間を境にして全世代にリーチするような普遍性を獲得する。古今東西の傑出したバンドたちが経験してきたそんな決定的瞬間が、ONE OK ROCKにも訪れた。新しいアルバム『残響リファレンス』だ。
前作で築き上げた新世代バンドとしてのマニフェストともいうべき轟音サウンドをベースにした今作。そのなかで特にインパクトを放っているのは、“Pierce”というドラマチックなバラードだ。他にもテンポを少し遅くした楽曲にインパクトが生まれているのがポイントで、ここではTakaの類まれな歌唱力がカギを握っている。というのも、彼の歌声は轟音バンドの切れ味を削ぐものではなく、それをむしろ強化し、独特の凄みを加えるタイプのものだからだ。
言い換えると、ライブハウスでの狂熱的な感覚を磨きつつ、どんな場所で再生しても伝わるスタンダード的なスケール感を備えているのが本作。ライヴハウスで汗まみれになって演奏している姿も、スタジアムの大きなステージに立っている姿も共に連想させる今作で、彼らは間違いなく新しい次元に入った。(神谷弘一)