もう一度、空を見上げるために

ゆず『翔』
2011年11月30日発売
ALBUM
ゆず 翔
《哀しい事が多過ぎて 窒息しそうになるのなら/大きく息を吸い込んで 果てしない空に吐き出せばいい》という北川悠仁詞曲のタイトル曲“翔”のシンプルかつ普遍的な言葉が上滑りすることも空回りすることもなく、僕らの感情と思考と問題意識にがっちりとギアを合わせながら、でっかい動力源として心のど真ん中に食い込んでくる……ゆずがこれまでに獲得してきた「ポジティヴィティという名の自然体&最強のファイティング・ポーズ」の極致的なアルバム『2-NI-』を経て放つこのシングル曲で、彼らの歌はそれこそ音楽を超えた思念そのもののような高らかな飛翔力を見せている。そして、カップリングの岩沢詞曲の“ムラサキ色”で《今自由に逆らって 突き動く悲しみよ 少しだけ黙って》というハッとするようなフレーズから転調して《さぁ行こう 君のもとへ》とたおやかに歌い上げる瞬間、感激と戦慄が同時に押し寄せてくる。歌と楽曲だけで人の心にどこまで作用できるかという、朗らかで壮絶な音楽修行の道を歩んできたふたりだからこそ、今の日本に響かせることのできる、渾身の希望そのものだ。(高橋智樹)
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