表現と共有の間

藤巻亮太『光をあつめて』
2012年02月29日発売
SINGLE
藤巻亮太 光をあつめて
昨年3月9日に行われたレミオロメンのライヴで、彼らは“3月9日”を2回歌った。この曲はライヴの定番であり、常に会場は大合唱となる。彼らもそれはわかっていて、演奏の途中で歌をやめ観客に歌わせるのが常だ。つまりこの曲はレミオの曲であっても、すでに観客のものとして共有されている。だがこの日のライヴで藤巻亮太は、2回とも観客にマイクを渡すことなく、自分ひとりで歌いきった。まるで観客による「共有」を拒否するかのように。
 
この曲を聴いてなんとなく納得できた。彼はバンドも観客も周りの思惑も関係なく、シンガー・ソングライターとしての自分の原点は何なのか、ひいては本当に歌いたい曲は何なのか、確認したかったのだろう。そのために自分にとって一番大事な曲を、もう一度自分の歌として歌いきっておきたかったのだろう。この曲はそのアイデンティティ確認の第一歩だ。
 
曲調はいつもの藤巻節で、レミオとの決定的な違いはない。震災後を踏まえたメッセージは真摯で誠実だが、おそらくカラを破った生身の藤巻が楽曲に出てくるのは、このあとだと思う。(小野島大)
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