男の子だって泣くからこそ

ザ・テンパー・トラップ『ザ・テンパー・トラップ』
2012年05月16日発売
ALBUM
ザ・テンパー・トラップ ザ・テンパー・トラップ
ポップ・ミュージックとは何のためにあるのか――それを、ひと回りもふた回りも広がったロック・マナーで示すアルバムである。素晴らしい。“スウィート・ディスポジション”及び1 st『コンディションズ』は、シーンに属さない独自の無邪気さがあった。が、それが時に位置付け不能な異物感として、昨今の細分化されたリスナー/メディアに敬遠されていたのも確か。本作はその概念をひっくり返すだろう。エレクトロニックをより導入することで全体に洗練され、いい具合に抑制も効いている。ダギーはあの特徴的だったファルセットをほとんど封印している。そういう意味では激変の1枚。“トレンブリング・ハンズ”など、ここぞとばかりに叙情的に聴かせるエピック・ナンバーもあるのだ。しかしながら、こうした変化がザ・テンパー・トラップというバンドの印象をいい意味でまったく変えないのは、たとえば“ネヴァー・アゲイン”で全開になるように、ハートブレイキングの痛みがエモーションの変遷として正直に焼き付けられているから。だからこそ、ビートの原始性をより強調することになったのだと思う。そう、悲しみを祝福するために。(羽鳥麻美)
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