EXPerience胸が切ない。でも、一秒でも長くここに居たい。なんて、恋みたいだけど、そんな夢と現(うつつ)の狭間のような感情を全身に満たすアルバムだ。言い方がまどろっこしい? つまり、ポップ・アルバムとして最高傑作ってこと! ワクワクを煽るように音が一つづつ重なり合っていく幕開けから、こちらに手を差し伸べるように、力強く開かれた楽曲ばかりが並んでいる。輝くメロディ、弾むビート、そしてシンガロングやハンドクラップを誘うフレーズ。だけど、そんな夢のようなスウィートネスの根底に、どうにも現が感じられてならないのだ。≪本来なら/費やした殆どの時間を/悔やんで眠るより/忘れてしまうべきなんだよ(“Crystal”和訳)≫――だからこそ、華やかさに圧倒させられるようなショウビズ的なポップではなく、共に歌い踊れるようなリアルなポップに成り得ていると思う。カントリーやブルースを取り入れて、普遍性を得ているところも大きい。今を暗いと嘆くより、少しでもパーティを引き伸ばす方法を考えなくちゃ。そんな切実な願いまでも想像できる。時代と僕らが求めていたキラメキはここにあったんだ。(高橋美穂)