アーティスト

    不変と大変化、最良のバランス

    ハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルズ『ウェルカム・オブリヴィオン』
    2013年03月06日発売
    ALBUM
    ハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルズ ウェルカム・オブリヴィオン
    トレント・レズナーが、NINではない場所から新たな音楽の創造に向かうにあたり、企画モノ的な「女性シンガーのプロデュース」ではなく、「最も近い距離にいる異性+最も信頼できる仲間2人とのバンド」という体制をとったことは、その才能を引き続き発揮するためにも最高の形態だったと強く実感する。
     
    トレントは随所でバック・ヴォーカルをとるものの、デュエットと言えそうなのは“トゥー・レイト・オール・ゴーン”くらい(この曲は音色こそ最新モードに更新されているが、リフの一部や後奏でのデペッシュ・モード風な展開に『ダウンワード・スパイラル』にも通じる要素を感じた)。また、“ハウ・ロング?”では、サントラに提供したブライアン・フェリーのカヴァーと並び、最もポピュラー・ソングに寄った(※NIN前のキャリアを除く)トレントが聴ける。
     
    以前の持ち味は保ちつつ、女性の声を基点に新しい音像を描き出したトレントと、彼の要求に応え、予想以上に深い次元まで歌手としての魅力を引き出されたマリクイーンに、まず感心。憎悪の音楽から愛の音楽へと大転換を果たしながら、芯にあるものは全くブレていない。(鈴木喜之)
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