混乱する私たちの心、そのまま

うみのて『IN RAINBOW TOKYO』
2013年03月20日発売
ALBUM
うみのて IN RAINBOW TOKYO
太平洋不知火楽団、笹口騒音ハーモニカなどでライヴハウスから路上まで幅広く活動する騒音笹口(Vo・G)率いるうみのて。生々しいギターロックに、鉄琴が煌めきピアニカの音色が哀愁を漂わせるサウンドが心地よい。が、笹口騒音が放つメッセージは全然穏やかでないのだ。ワンクリックで誰かの存在を消せてしまうIT社会に《便利な命 便利な死 便利な心》と毒づき肉体を取り戻させようとし、秋葉原通り魔事件を受けて書いた“もはや平和ではない”では《「笑っていいとも」やってる限り 平和だと思ってたけど もはや平和ではない》とガンガン警鐘を鳴らしている。社会派なのかと思いきや、《地獄はいろいろたくさんあるけど/天国はひとつ/あなたの腕の中だけ》とどうしようもなくロマンチックだったり、ここに綴られた13曲は日常を生きるうえで混乱する私たちの心そのものだ。平和な日常と残虐で悲しい非日常が、思いの外表裏一体であること、そこで無防備に生きているんだと悟った笹口騒音の、というか現代人の、正常な叫びなのだ。うみのてから聞こえるこの声に、耳を澄ませて欲しい。(藤田華子)
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