40年後の落とし前

イギー・アンド・ザ・ストゥージズ『レディ・トゥ・ダイ』
2013年04月24日発売
ALBUM
イギー・アンド・ザ・ストゥージズ レディ・トゥ・ダイ
故ロン・アシュトン参加の最後の作品になった前作『ウィヤードネス』(07)。いくらイギーとアシュトン兄弟の揃った再結成でも、40年近く前のプリミティヴな狂気が再生するはずはない。いずれも不滅のロック・クラシックな前作3枚を超えるのは奇跡だし、むしろ新生バンドとして聴くべきだと思う。ゆえにリリース時のネガな反応に驚いたものだが、懲りずに(?)こうして新作が登場。アルバム・タイトルといいジャケといい、「文句あっか?」と言わんばかりの覚悟の据わりっぷりが頼もしい。

バンド名義からも窺えるように、09年ツアーで復活した『ロー・パワー』の立役者:ジェームズ・ウィリアムスン参加が聴きどころだ。その後パンクとスピード・メタルの鋳型になったギター・サウンドで知られる彼だが、ソウルからロックンロールまで音楽的な引き出しの多い人でもある。十八番の火炎放射器パンクから王道アンセムまで、彼のディレクションとアイデアはラフ&レディな前作に欠けていたトータル性をもたらし、ストゥージズの潜在的な可能性を提示していく。ソロでおなじみな深い歌声を随所に披露するイギー、(恐らくロンに捧げた)⑩の哀愁は特に泣ける。永遠のロック不良青年団が大人になった作品と言えるし、そこが不満なファンもいるだろう。だが人生の終幕が視界に入ってくる年代の彼らにとって、当時まったくと言っていいほど売れず理解されなかったストゥージズが遂に正当な評価を獲得した今、遅きに失した勝利を味わうのは当然の権利。今でも世界最高のライヴ・バンドのひとつである彼らが新たな息吹と共に動き出すのは、喜びに他ならない。(坂本麻里子)
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