ノエルに気に入られオアシスの前座を務めたこともあり、1997年のファースト・アルバムの時点では彼らの後継者とも言われたトラヴィス。内省的ソングライティングと青い声が目立つ1999年のセカンド・アルバム『ザ・マン・フー』の超弩級ヒットによって、2000年代のUK「うたもの」バンドを先導する存在となった。もともと自主制作シングルでデビューしていた彼らだが、08年からは(当時の名義を復活させる形で)自分たち自身のレーベルから音源をリリースしている。そんな転機となった前作『オード・トゥ・ジェイ・スミス』は、メロディアスで心優しいイメージも強かった『ザ・マン・フー』以降の「いいひと」イメージから一転して、いくぶんワイルドな作風となっていた。この5年ぶりの新作では、トレードマーク的「うたもの」感が大復活。自主レーベル2作目にして、先述のファーストとセカンドのギャップを埋めるような路線の傑作が誕生した。まんなかにメンバーたちの(少しおどけた姿の)シルエットが小さく映ったカヴァー写真のイメージそのままに、「普通だけど、素敵」な「今を生きる」感にあふれている。(伊藤英嗣)