天才の正体は、天才だった

アークティック・モンキーズ『エーエム』
2013年09月04日発売
ALBUM
アークティック・モンキーズ エーエム
聴けば聴くほど情報量の過剰なアルバムだ。それはメロディのアルバムとしてシンプルに纏まった前作『サック・イット・アンド・シー』と比較すると明らかだし、『フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー』や『ハムバグ』のように、一方向にひたすら突き進むという意味での過剰とも違う。四方八方に根を張る豊かな音のヴァラエティ。R&Bのコーラスをフィーチャーしたり、リヴァーブ多重のアシッド・フォークをやってみたり、アレックスのソロや別プロジェクトでの経験を活かした情感たっぷりのバラッドを鳴らしてみたり、かと思えばハードなリフや速弾きの応酬といったロック・バンドとしての食いごたえも十分にある。そしてその全ての多様性の源にアークティック・モンキーズ自身がいると確信できる作品だ。色んなことをやりたいからやったのではなく、彼ら自身が自分たちに「やらせた」、そんな超主体性と必然のアルバムなのだ。本作をスタジオ・アルバムと彼らは評したが、まさに彼らのプレイヤーであると同時にプロデューサー的視点も感じるアルバムである。 

アークティックは喩えるならスポンジみたいなバンドだった。途方もない才能のキャパシティと反射神経を持ち、様々な音楽と出会い、次々と「吸収」し、ピュアに興奮し、自分たちの音楽に反映させてきたバンドだった。そんな彼らが遂に自らが「発する」側となった。その才能の本当の途方もなさを明らかにした。『AM』と初めて自らの名前を冠した作品に相応しい、彼らの代表作として歴史に刻まれるべき傑作。(粉川しの)
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