オ・ルヴォワール・シモーヌをはじめとする卓越したリミックス・ワークや、次々にネットで公開される〝エヴリシング・グッド?(今作にもボーナス・トラックで収録)などのディスコ・ナンバーで注目を集めてきた、オースティン・ウィルキンソン&エルヴィス・クレイグによるUSナッシュヴィル発エレクトロ・デュオ=ジェンセン・スポータグ。アリエル・ピンクがアートワークを手掛けた(&1曲参加した)自主制作アルバム『Street Girls』から約6年。『Sergio』『Jackie』『Pure Wet』とEPリリースしてきた彼らのフル・アルバムがついに完成。とはいえ、今作の本編10曲中ダンス・フロア対応ナンバーはM7〝ベルズ?&M8〝アンダー・ザ・ローズ?くらいで、純白のアンビエントな風景が広がるM1〝レイン・コード?をはじめとする楽曲でコズミック・エレクトロの深淵へと導かれるような、あるいはこれまで2人がクールなディスコ・トラックに託してきたその「クール」のDNAを純粋培養したような、メロウで透徹した音世界が広がっている。聴く者すべての全細胞を平熱のままスパークさせていくような、静謐の異世界の音。(高橋智樹)