通算12枚目となるアルバム。「懐か新しい」をテーマに “雨のち晴レルヤ”“ユートピア”など和楽器が存在感を放つ曲、前山田健一と再コラボを果たした“表裏一体”や、路上時代の未音源化楽曲“所沢”まで、個性さまざまな全15曲を収録する。しかし、ゆずとはいつも「懐か新しい」存在ではなかっただろうか？　フォーク、ポップ、ロック、様々な要素を飲み込み進化しつづけながらも、彼ららしさが壊れることのない、しなやかなメロディと歌詞。趣向を凝らした演出で作品世界に誘うライヴには毎回新たな試みがあるが、一昨年、11年ぶりの東京ドームでのほぼふたりきりのライヴや、毎年恒例の「冬至の日ライブ」……と、原点回帰も忘れない。彼らはいつも、過去の自分たちの積み重ねと、新たな試みの両方を大事に進んできた。それでも改めて「懐か新しい」というテーマを選んだことは、ここで一度そのスタイルを極め、今後も同様に活動していくという決意表明なのだろう。新しくするばかりでは結局変わらない、新旧の融合こそが大事だと歌う9曲目の“レトロフューチャー”はその宣言を体現している。（塚原彩弓）