昨年のファーストアルバム『演出家演出』で、バンドとしての実体と肉体性を手に入れたパスピエ。配信シングルを経て次の一手となるこの4曲入り両A面シングルでは、獲得した筋肉と技を使って「パスピエらしさ」をもっと大きく自由なフォームで打ち出し始めた。“MATATABISTEP”は軽快なシンセから始まる80sディスコ風のダンスナンバーなのだが、これは現在シーンを席巻している踊れる4つ打ちロックに対する、パスピエ流の回答なのだと思う。それは大胡田なつきが歌う《次から次トレンドこれでしょ/目移りしちゃうな アイデンティティ守っていたい》という意志からも読み取れる。さらに“あの青と青と青”で海と空をテーマに伸びやかで大きなサウンドスケープを描き出し、“万華鏡”でパスピエがもつ歌謡的ポップスの一面を更新していくという、非常に多面的で実験的な作品に仕上がっている。そしてラスト、電気グルーヴ“Shangri-La”のカヴァーにも驚いた。生々しくグルーヴィーな新解釈アレンジは、間違いなく彼らにしかできないもの。パスピエ、底が知れないぞ。(小新井知子)