9mm Parabellum Bullet・滝善充が完全解説! 最新作『BABEL』の全曲を解き明かす

9mm Parabellum Bullet

メンバー全員が作曲を手掛け、四者四様の楽曲が咲き乱れた前アルバム『Waltz on Life Line』から一転、作詞:菅原卓郎(Vo・G)/作曲:滝善充(G)による楽曲群で貫かれたニューアルバム『BABEL』。徹頭徹尾速弾き・ツーバス・ブラストビートといったメタル的なテクスチャーが9mm Parabellum Bullet史上最も過積載されたエクストリームなアルバムながら、それらすべてがエモーショナルでダイレクトなロックアンセムとして響いてくる、どこまでもドラマチックな名盤だ。

今回RO69では滝善充とともに『BABEL』全10曲の背景とディテールに迫ってみた。左腕の不調によりライブ活動は休止している彼だが、唯一無二の爆発力をギター越しに奏でるギタリストとしての存在感が今作では明快に際立っているし、ソングライター/プロデューサーとしての驚くほどの高性能ぶりが、飾らないその語り口からもリアルに伝わってくることと思う。

インタビュー=高橋智樹

今回のアルバムには自分がスランプで曲を書けなかった悔しさをこめている

──昨年末からライブ活動をお休みしている状況もある中で、5月にニューアルバムが出る――ということで、もしかしたら世間的には「9mmのライブに表現欲求を向けられないルサンチマンを楽曲制作に向けた」みたいな見方をする人もいるかもしれないですけど、実際は全く逆で。

「はい(笑)」

――滝くんのソングライターとしての情熱とアイデアの爆発が、何より今回のアルバムの最大の原動力になっているという。

「そうですね。まあ、そういう意味で今回のアルバムにこめたものがあるんだとすれば、前の6枚目(『Waltz on Life Line』)で自分がスランプで曲を書けなかったっていう悔しさをこめてる、っていうものですね。実際、体調が悪くなってくる前から作ってたし、内容も決めてたアルバムだったので」

――でも不思議なもので、今回のアルバムって9mmの中でもヘヴィなアルバムだし、メタルっぽい要素もたくさん詰まってはいるんですけど、かといって「メタルアルバム」かというとそうではなくて。

「そういうものではないんですよねえ(笑)。それはほんとに不思議なところで。『メタルだ』って言っちゃえばマジでメタルなんですけど、メタルのアルバムか?って言われると、表現したいものはメタルでは別にないなあと」

――「オルタナ」って言うと意味は違いますけど、どちらかって言うとメンタリティはそっちに近いアルバムですよね。

「どっちかと言えばそうだと思いますね。メタルパートは多いですし、メタルアイデアは多いですけど、流れと雰囲気、エクストリーム感を表現する手段としてメタルを、そうでないものと混ぜていくっていうところで、それがバンドのキャラになっていくと思うから。9mmの演奏内容って、今までもさんざんメタルなことをやらかしてきたんですけど、メタルバンドではないなっていう気はずっとしていて」

――フィギュアスケートで言うところの4回転とかトリプルアクセルみたいな、メタルの「規定演技」としてタッピングとかツーバスとかの頂点を目指すようなマインドとは、9mmのエクストリーム感って明らかに違いますからね。

「そういうものではないですし、気分的にはどっちかって言うと真逆をやりたいんですよね。でも、表現として使いたいものは――メタル好きだし、楽しいし、規定のタイミングで『ここで4回転!』じゃなくて、また違うことをやるとか。タイミング的によくわからないところで、サビ中に速弾きをするとか(笑)」

「引き算の美学」みたいなことをみんな言ってるけど、何が美しいのかなあ?って

──1曲目の“ロング・グッドバイ”から、タッピングとブラストビートで始まるっていう衝撃的瞬間の宝庫なわけですけども。これも基本的には、最初から滝くんの脳内で鳴ってたっていうこと?

「はい(笑)。これもひと息でワンコーラス分、ギター弾いて作ったんですけど。もうこのタッピングを思いついて、『お、適度に弾きやすく、変な飛び方をして面白いぞ』って思ったら、自分でそのタッピングを弾いてるだけですげえテンション上がってきて。そこから特に何のブレイクとかもなく、いきなりブラストビートに突っ込めるくらいのテンションになれたっていう(笑)」

──そこから最後は9mmアンセムっていうものになっていきますからね。

「そうですね。まあでも、中身はバランス良く作ろうかなあっていうのは“ロング・グッドバイ”ではあったので。でも普通、1曲の中でタッピングとブラストと4つ打ちをやっちゃうと、びっくりだけの曲になっちゃったり、変態系の曲になっちゃうんですけど。それはよくないなあと思って。そこまでやっても、ポップスの道を外れないぞ、っていう気持ちではあったので。そこは人一倍真面目に考えないといけないぞ、と思ってやってましたね(笑)」

──“Story of Glory”の展開もすごいですね。「この曲はこういうリズムの曲で」「こういうカテゴリーの曲で」っていうのが、もはやひと言では割り切れない感じになってきていて。

「でもそこは『ひと言で説明できるように作ろう』と思ってて。たとえば“Story of Glory”だったら……『メロディックパンクの曲です』で終わる落とし方にしたいなあと思って。中身は問わないんですけど(笑)、『メロディックなパンクの曲だね』っていう感想がひと言目に来るように――何ならひと言で終わって次の曲に行っていただいていいくらいの感じで」

──ただ、メロディックパンクにこれだけの音楽的要素を埋め込んでる人もいないでしょうし。

「そうですねえ、埋めてますねえ(笑)。結構こだわったネタとかも、1曲の中に1ヶ所、2ヶ所、3ヶ所くらいあったりするんですけど。一回で伝わらなくてもいいから、せめて『キレがある』とか『いいタイミングだった』っていう程度のことでいいから伝わればいいなっていう、謙虚なマインドもあって。一回で聴ききれない、っていうところまで情報を入れてしまったなあっていうところから、真面目にポップスであるっていう印象にするためには、もっとひと言で言えるように、通りがよくなるようにしていかないといけないなあと思って、いろいろやってましたね(笑)」

──それぞれの曲でそういう、滝くん的なキーワードを訊いていくのも面白いかもしれないですね。じゃあ、次の“I.C.R.A.”は?

「“I.C.R.A.”は……『ブラストの曲だね』って(笑)。ブラストで、カオティックで、激しい曲だね、っていうくらいに」

──激しいけど、そこにラテンとかスパニッシュっぽい要素も入ってきていて。

「そうですね。間奏が妙に長いとか、間奏でやりすぎるとか、変な音が入るとか――で、すっげえわかりやすいサビにして、ブラストばっかりの部分とのバランスになればいいなあって」

──あと、この曲は「ガムテープ奏法」があるらしいですね。スクラッチノイズの代わりに、弦にガムテープ貼ってベリベリって剥がして音を出すっていう。

「ガムテープ奏法、ありますね(笑)。表現することが決まってて、表現しきれていれば、何を入れてもいいんだな、別に音を抜く必要はないなあっていうのは、学生の頃から思ってて。『引き算の美学』みたいなことを、90年代からみんな言ってるなあと思ってたけど、何が美しいのかなあ?って(笑)。足し算する喜び、増える喜び――若者の気持ちってそういうものであることが多いし。引き算の美学はちょっと、大人になってからじゃないとわからないんじゃないかなあ、と思ってた若者の頃でしたね」

──なるほど(笑)。続いて“ガラスの街のアリス”は?

「これは最初から『シングル目指して頑張るぞ』『リード取るぞ』みたいな感じで作ってて。何か、わりと80'sな感じというか、どこかマイケル(・ジャクソン)的な、ちょっとしたコミカルさがあるといいなと思ってて。でも、9mmのスタンダード的なところに落とし込んでいって、他の曲とのバランサーにしようかな?っていうところもあったので。イントロのパートでツーバスくらいまで入れて、でもツーバスよりも4つ打ちのパートのほうが盛り上がる、みたいな流れにどうにかしたいなあと思って。なので、イントロのギターのリードパートをほんと三日三晩考えて、『もう完璧だ! 1ヶ所たりとも音を動かすことができない!』っていうところまで入れられたので。逆にその後、メロディは♪ふんふんふん〜って鼻歌で一瞬でほとんど完成しちゃって(笑)」

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