結成25周年アニバーサリー・イヤー真っ只中のフラワーカンパニーズから約2年3ヶ月ぶりに届いた、15作目となるオリジナル・アルバムのタイトルは『Stayin' Alive』。灰色の日常に死に物狂いで抗うのでもなく我を忘れて生き急ぐのでもなく、しぶとく図太く「生き続ける」というフラカンの闘争宣言が、「メンバーチェンジ&活動休止一切なし」で25年間走り続けてきた4人のブルースとロックンロールそのものとして強く、深く胸に刺さる意欲作だ。3月1日からは日比谷野外大音楽堂&大阪城音楽堂公演を含む25周年ツアー第4弾「フラワーカンパニーズワンマンツアー『Stayin' Alive』」をスタートさせるフラカンの「今」と「これから」について、鈴木圭介(Vo)&グレートマエカワ(B)にじっくり話を訊いた。

インタヴュー=高橋智樹/撮影(インタヴューショット)=塚原彩弓

マエカワ ちょっと鈴木に頼りすぎたところも正直あったんだよね。それが今のフラカンにとって一番良いと思って10年ぐらいやってきたんだけど、また次の10年、やっぱり色んなことやらんとね

── 結成25周年を迎えてのキーワードが「Fight」でも「Survive」でもなくて「Stayin' Alive」=「生き続ける」っていうのが何よりリアルでいいなあと思ったんですが。

グレートマエカワ(B) そうやね。まあ、「25周年記念アルバム」でも何でもないし。25周年っつって、自分らでも、スタッフ含めて盛り上げてるんだけども、自分らで言っといて何だけど、25周年とは言っても、「24周年」とも「26周年」とも別に変わらないんだよね(笑)。そういうところを考えた結果、このタイトルになったんだけど。俺らの活動をよう言い当ててんなあって思って。

── 音楽的にはいろいろ冒険している一方で、その「生き続けることのブルース」感がディープに滲んでくる作品になってますよね。

マエカワ 俺たちはやっぱり、鈴木圭介が作る限り、ブルースからは逃れられないから。「鈴木圭介のブルース」っていうバンド名でもいいぐらいだから(笑)。

鈴木圭介(Vo) つくづく思ったんですけど、曲も含めて、やっぱり僕らは結局、出だしがブルース・バンドなんですよ。何も考えないでやっていくと、最終的に年老いた時に、またブルース・ロック・バンドに戻っていくんだろうなあっていうのは思いましたね。25周年を経て、こういうアルバムを作って。まあ、アルバムはいろいろ考えて作るじゃないですか。でも、何も考えないで作ると、確実にブルース・ロックになるだろうなあって(笑)。

── 『ハッピーエンド』からベスト盤『新・フラカン入門(2008-2013)』を経て、「次のアルバムはこういう作品にしよう」っていうイメージはあったんですか?

マエカワ や、別にその辺は何も考えずに──それこそ2個前の『チェスト! チェスト! チェスト!』(2010年)を作る時は「俺たちを代表する名盤を作ろう!」とか、その前の『たましいによろしく』(2008年)の時は「とにかく良い曲を作ろう」とか、そんなことを漠然と頭に描いて、みんなと話してやったりしてたんだけど。今回はとにかく、もう『ハッピーエンド』終わった後ぐらいから──その時はベストが出るっていう話も出てなかったんで──次のアルバム用に、何でもいいから曲をたくさん作って、プリプロたくさんやって、デモを録って、みたいなことを何回もやってたんですよね。

鈴木 曲調がやっぱり今回明るめなというか、ミディアム・スロウなテンポ感の楽曲が今までより増えてきて。年とともにBPMがゆったりしてくるというか、自分が歌いたいことを、何も考えずにパッと出しちゃうと、だいだいミディアム・スロウぐらいのテンポになってきちゃうので。今回、みんなで合作みたいな感じで──。

マエカワ 作り方をね。

鈴木 うん。「出したい人がいたらどんどん全部曲出そう!」っていう感じで。それまでは僕待ちみたいなところもあって、僕が出だしの基本形を持っていったものを、みんなでアレンジする、っていうのが、ここ数作のやり方だったので。

マエカワ そこら辺がね、今回の制作で全然違うところかな。まあ、鈴木が持ってくるものが良くないと、アルバムの中心はなかなかできにくいな、っていうのはあるんだけど、それ以外は誰が作ってみてもいいんじゃないかなって。もともと昔アンティノスの時にはそうやってたわけだし、竹安(堅一)が持ってきたモチーフから作っていったりしてたわけだから。そういうのをもっとやってもいいんじゃないかなって思って。確かに、個人的にもちょっと思うところがあって。ちょっと鈴木に頼りすぎたところも正直あったんだよね。それが一番わかりやすいなと思って、「この作り方が今のフラカンにとって一番良いな」と思ってこの10年ぐらいやってきたんだけど、やっぱりまた次の10年を──10年っていうところを見てるわけじゃないんだけど、やっぱりいろんなことをやらんとね。鈴木も「あ、ちょっと疲れてるな」っていうところも正直あったと思うんだよね。みんなでいろいろやってみて、いいところが出てくると、また鈴木からいいものが出てくるんじゃないか?っていうところもあったから。まあ、歌詞のない状態の曲だけっていったら、相当作ったよね、今回は。

鈴木 若者に響くにはどうしたらいいかとか、今回は微塵もなかったかも。中途半端にあてにいくとばれるじゃないですか。なんか、媚びてんなあみたいな

── "星に見離された男"のアレンジはすごいですよね。ポップ・パンクと、クイーンと、ところどころイエスっぽい薫りがするっていう。

マエカワ おっ、すごいところをちゃんと(笑)。

鈴木 出だしイエス、あとグリーン・デイっていう(笑)。

マエカワ タイトルがまずすごいですからね。しかも「見放された」じゃなくて「見離された」って。放つんじゃなくて、セパレートの方を選ぶセンスというかね(笑)。

鈴木 よくブルースでそういう言い方あるじゃん?アルバート・キングの"悪い星の下に(Born Under A Bad Sign)"とかさ。

マエカワ そうそう、しかもこのゴッタ煮感(笑)。でも、他の曲はダビングは実は少なかったりするし、ギターなんかは1st(『フラカンのフェイクでいこう』1995年)・2nd(『フラカンのマイ・ブルー・ヘブン』1996年)以来じゃないかな、こんなにギターを入れてないのは。「1本の強さ」っていうのを、ようやく竹安も見つけたと思うし、絶対そっちのほうがいいところもあるんだろうし。

── 斉藤和義さんとの共同プロデュース曲"この世は好物だらけだぜ"、「俺はハエで、金とか厚化粧の女とか"汚いモノ"が大好き」ってぶち上げておいて、最後は《誰かオレを(略)つぶしてくれ》っていう。最高ですよね。

マエカワ 鈴木圭介節ですよね、これは(笑)。

鈴木 これはでも、斉藤くんも僕も同じ意見だったんですよ。「最後は自分でしょ」って。他人のことを言ってるだけじゃダメでしょ、一番汚いのは自分でしょって。自分も汚いんだから、「つぶしてくれ」っていうふうに持っていかないとダメだねって。

マエカワ この曲もね、斉藤くんと一緒にスタジオ入って、ゼロから作ったんだけど。4人だったらできない曲だったと思うからね。こういう思いっきりハード・ロックっぽい感じは、ふたりギターがいるから面白いんじゃねえか?っていう感じでできたものだと思うし。

── ある意味、バンドのルーツ的な要素が、「原点回帰」とはまた違った形で露になった作品なのかなっていう気がするんですけど?

マエカワ その通りだと思いますね。たぶん、自分らが好きなものを、真似じゃなくて、思いっきり「そういう感じ」のやつをやってみようと思ったのは確かですね。それこそ長くやってるから、「これやったら◯◯っぽいな」って照れでやめちゃったりすることもあったんだけど、「それを聴いてカッコいいと思った自分がいるんだし、やってるメンバーは全然違うんだから、アンサンブルになったらフラカン以外の何にもならない」っていうのはあったから。好きなものを自分の身体を通して、変に頭使わないでそのままやればいい、っていう……うん、「変に頭使わない」っていうのはあったかな。

鈴木 ラウド・ロックやっても勝てないし、4つ打ちでも勝てないからね。若い子には勝てないですよ、そういうのをやろうとしたら。

マエカワ 自分ら4人の中に「そういう音楽がカッコいいんだよ!本気でやりたいんだよ!」っていうやつがひとりでもいればやると思うけど……そうでもないよね?(笑)。

鈴木 20代の頃はまだあったよね。デジタルの波に呑まれましたもん。

マエカワ 音が歪んだほうがいいとかね。

鈴木 「うわあ、みんなデジタル行くんか……よし、行こう!」って(笑)。その時はわりと躊躇なく行ったもんね。

マエカワ そう、20代はそういうのがあった。あったから、あれだけいろいろ足掻いてたんだけど。今は「いや、それやったところで……」っていうか、やりたいっていう気持ちが湧いてこないからね。当たり前だけど、やりたい音楽をやるのが一番良いから。またこれが2〜3年経って、そういうチャレンジをしたい時期が来るかもしれないけど、その時その時でやりたいことを素直にやるのが一番良いと思ってるから……中心に鈴木の歌があって、それをどう俺らが包むか、っていう差だと思うんだよね。さっきも言った、鈴木圭介のブルースあってのフラワーカンパニーズだと俺は思ってるから。そこは今後も変わらないところじゃないかな。

── 「同世代に向けて曲を作ってる」っていうのはこれまでも繰り返しおっしゃってますし、もちろん同世代の根強いリスナーもいる一方で、そのフラカンの音楽が若い子であったり年上層であったりっていうところに訴求力を持ってるわけで。そういうフラカン・マジックは、今回のアルバムにも強くある気がしたんですけどね。

鈴木 まあ、まだわかんないですけどね。ただまあ、40代の自分が作ってる歌だから、40代の人には──「わかる!」までいかないまでも、まあ響くだろうなあって。そういう自分たちが、たとえばJ-POPとか日本のロックンロールを支えてる10代の子とかに伝わるためには、ちょっと考えないといけないんですよね。自分もう40代なんで、世代が開いてきちゃってるんで。だから、「若者に響くにはどうしたらいいか」とか、プロフェッショナルの人はそういうことを考えると思うんですよね、ターゲットをちゃんと10代に絞って。今までも、そういうことはさほどメインに考えてたわけでもなくて、「頭の片隅に」みたいな感じではあったんだけど。今回、そういうことは微塵もなかったかも。まあ、ライヴではありますけどね。たとえばフェスとか、若い子にどれだけ響くか?みたいなところに照準を当てたりはしてるんですけど。

── "short hopes"はすごくシンプルでソリッドな曲だけど、確実に「今」の曲ですからね。

マエカワ そうだね。あと、この曲は歌詞がね。この歌詞を鈴木が出してきた時、「この曲がアルバムの中心になるのかな」って思うくらいインパクトがあったからね。最初できた歌詞はこのままではないんだけど、8〜9割ぐらいこんな感じで。

鈴木 うん、だいたいの形はこんな感じで出してて、メンバーと一緒にやってたんだけど、いまいち抜け切らない感じだったので、常田(真太郎/スキマスイッチ)に「手伝ってくれ」って言って、また一緒にもう一回崩して、作り直して……いったら、元の感じに戻っていったっていうか。細かいところは全然変わっちゃってるんですけど、大きな流れは一緒の感じになりましたね。

── 《男のよれたスーツには 2枚のカードが入ってる/たった1枚の銀行のカード まっぷたつに割ったから》("short hopes")とか、確かに10代の子は書かない歌詞だけど、でも対象の世代は選ばないし、"深夜高速"でフラカンの存在を知って聴き始めたぐらいの10代の子のブルースと共鳴すると思うんですよね。

マエカワ うん。まあ、"深夜高速"だって、「10代に向けて」とか思ってたわけじゃなかったしね。

鈴木 出してびっくり、みたいな感じだったしね。「あ、そうなんだ」って。

マエカワ その曲に何かがあれば、引っかかる子は引っかかるし。自分らがターゲットを絞ったところで、職業作家みたいなタイプではないし。そんな利口にはやってないし。それはでも、全然悪い意味でもなくて。得意なことをやって、俺らバンド25年やってきてるわけだし。それも本当は大事なところかもしれんけど、でも俺らは細かいところじゃなくやっていったほうがいいと思ってるわけだから。

鈴木 中途半端に当てにいくと、バレるじゃないですか、やっぱり。「なんか媚びてんなあ」みたいな。

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