波なら自分たちで起こせ! PAN、「自由」と新作『PANJOY!!!』を語る(2)
途中から僕が歌うことになったけど、コードは変えたくなかったから隠れてコソコソ練習したり(よこしん)
――広げていってる部分で言うともうひとつ、一番の問題作というかびっくりしたのが“ヨコカワシンタロウの調べ〜俺はタテじゃない、ヨコだ!〜”で。
よこしん (笑)。
ゴッチ この歌ヤバかった(笑)。
川さん 作曲もメインボーカルもよこしんなんですけど、曲調が今までにない感じやってどうしたらいいんかなっていう。よくわからん歌やけど雰囲気はあるし、ボーナストラックに使えるんじゃないか、初めはそんな段階だったのが「これよこしんの歌にしたらおもしろいな」って思いついたときがあって。サビの歌詞が何となく浮かんで、これやったらよこしんが歌ったほうがいいやろなって。そうするとだんだん完成度が上がってきて、これはもうボーナストラックの域を超えてしまったなってことで。実際レコーディングしたら気持ちよさそうに歌ってるやんって思いましたね。
よこしん 歌うのはもともと好きなんですけど、本当は川さんのキーに合わせて作ったんで僕にとっては高くて。途中から僕が歌うことになったけど、絶対コードは変えたくなかったから隠れてコソコソ練習したり。ボーカルってすげえ大変なんやなって改めて思いました。全部バアーッて録ってはい終わり、かと思ったら「1回Aメロだけ録ってみようか」って言われて歌ってみると「もうちょっと気持ち入れて歌ってほしいな」って。そうやって何回も歌ってみて、やっとボーカルの気持ちがわかりましたね。
――ひとりのメンバーがここまでフィーチャーされることってなかなかないですよね。バンド内の立ち位置がわかるというか。
ゴッチ 頭からケツまでね。
川さん まあ歌ってる内容に違いはないというか。そういう人間やから。周りのバンドからいじられたり、喋りすぎてみんなが引いたり、そうさせる節があったりするんで(笑)。これが歌になったらみんなも喜んでくれるやろな、たぶん笑ってくれるやろなっていうところと、普段のよこしんを知らん人に知ってくれっていう。ライブでやったらどんな雰囲気になるのか読めないですけど。
――爆笑じゃないですか?
川さん 盛り上がったらいいですけど、あんまり盛り上がらんかったときはほんまヤバいよな(笑)。
――それは怖い。でもよこしんさんがPANのメンバーになって6、7年になるわけで、きっと今だからこそできた感じもあるんでしょうね。
川さん そうですね。やっぱそんだけの期間があったからよこしんのキャラも出てきた。普段ほんまにうるさいから。
ゴッチ 今はちょっとおとなしくしてますけど。
――普段通りにお願いしますよ(笑)。
よこしん たぶん困ると思うんでやめときます(笑)。
ダイスケ インタビューとかライブとかになると急にカッコつけ出すから。
川さん 普段はもっと内容のないことをベラベラベラベラ――。
よこしん もうええって! しんどいしんどい。
川さん こっちのセリフや! まあそこをわかってくれっていう裏メッセージがあの曲にはあります(笑)。
テンションを上げたい時にPANを聴こうって。選んでもらえるバンドでありたい(川さん)
――ここからPANの根っこの部分について訊かせてもらうと、1曲目の“オリジナル”からもうそこが滲み出ていて。《自分の唄 響かせて》とか、楽しく笑えるだけじゃないところに説得力を感じます。表現者としてどんな想いを込めました?
川さん いろんなものの刺激は受けるけど、何か自分らしい味付けをして外に出したいっていうのはこだわってるところで。言われたことをそのままやれへんぞみたいなスピリッツ。それを押し切ってでもやるっていうぐらいじゃないとここまでバンドを続けることはできへんかったなって。
――ゴッチさんは、川さんのどこに個性を感じます?
ゴッチ 特にワードセンスは昔から独特ですよね。あ、そんな言葉持ってくるんやってびっくりするしおもしろいなと思ってるんで歌詞は任せてますし。僕じゃ書けないなと。そこは信頼してます。……いや僕より恥ずかしそうな顔しないで下さいよ!(笑)。
――はい(笑)。でも本当にPANは日本語の響きやグルーヴに誇りを持ってるバンドだと思うんです。例えば“サヨナラオサラバ”はまさにそういう曲だなと。
川さん これはスタジオでやりながら何か納得いかへんなと思ってて。メンバーと相談しながらでき上がっていった曲なんですけど、ちゃんとBメロ、サビの違いがはっきりあるからライブ映えするかなと。あとは“サヨナラオサラバ”っていうキーワード。これが出た時に気持ちいいなっていうか、清々しく言えてる感じがあって。
――語感も意味もバチっと決まったと。
川さん うん、逆に気持ちよくいきすぎると引っかかりがなくなったりもするんですけど。この言葉はいいなって思ってますね。
――あとは“大事な言葉”。《なにくそ なにくそ それで行け》みたいな拳を握りたくなるマインド、そしてそれをポップに聴かせてるから幅広い人に届くと思いました。
川さん その言葉はおとんがよく言ってたんですよ。「なにくそやでー!」「ああわかったわかった」みたいな。バンドを続けていく中でへこたれるようなときもあるけど、そのたびにあの精神って間違ってないよなあって。やっぱり生んでいくのって難しいし、ここなら安心っていう道からはみ出していくのも難しいんですよ。でもそれができたらほんまにいいよなっていうところで。その辺は、歌詞とかから感じてくれるとうれしいですね。
――最後の“想像だけで素晴らしいんだ”は2015年にシングルとしてリリースしていて、今回既発曲はほぼないけれどやっぱりこの曲は収録したんですね。
川さん そうですね。このタイミングでもう一回聴いてもらいたい曲だし、曲ってライブでやっていくと成長していくし。今ライブで聴くとより成長してるはずだから、もちろんCDでも聴いてほしいけどライブに来て生で聴いたら「よかったな」と思ってもらえるような自信はあるんで。
――ライブでやりながら自分たち自身も力がこみ上げてくるような不思議な曲なんじゃないかと思うんですが、どうです?
川さん 歌ってて気持ちを乗せられるというか、逆に客席から気持ちが飛んできてるなと感じるときもあるし。みんなが歌ってくれるようなパワーを持った曲だろうし、そういう歌をPANがやって、それで喜んでくれる人がいるっていうのがうれしいですね。
――そういうポジティブな要素が『PANJOY!!!』というタイトルにつながったのかなと。
川さん PANらしさでいい波を起こせてる中で、このアルバムをきっかけに聴いてくれる人が増えてほしいし、テンションを上げたい時にPANを聴こうって選んでもらえるバンドでありたいですね。あとライブに来たら楽しい、そこだけは絶対譲りたくない。そのためには大勢の前でやりたいし、5000人、10000人とかの前で《ギョウザ!!》とか言いたい(笑)。せっかく生きてるならバンドやってる間にこんなことやったったぞみたいな、それをライブで出せたときにほかには負けへんバンドなんやなって思えるし、そういうことをやりたいですね。