

- 1
- 2
音楽を人々に届けるために、バンドにとってプラスになること、バンドが世界にどう認識されるかという面においてプラスになる決断をしてきた
――と同時に、ザ・キラーズは当初から野心的でしたよね。あなたたちの前の世代は成功することをネガティヴに眺めているようなところがありましたが、それが、最終的にロックがヒップホップやダンスに負ける要因になったと思いますか?
ロニー「それがなんであれ、現実的なアプローチをとるべきだと俺は思うんだ。俺たちはおおむね、真っ当な決断をしてきたと思う。ふたつくらい失敗もあったが、音楽を人々に届けるために、バンドにとってプラスになること、バンドが世界にどう認識されるかという面においてプラスになる決断をしてきた。最近はより深刻な状況にあるからね。アルバムをちゃんと売ってるアーティストなんかいないから、音楽を浸透させる別の方法を考えなくちゃならない。以前は『俺たちはCMには曲を貸さない』とか『映画には曲は使わせない』とかみんな言ってたよね。冒涜行為と見做されていた。でも今じゃ、誰かに曲を聴いてもらいたいなら、サブウェイでバイトしたくなかったら、映画に提供するしかない。ただ、適切な作品を探すだけの努力はしなくちゃならないし、ハードワークが不可欠だね。何よりも重要なのはハードワークだよ。映画に曲を使ってもらえば、リッチな有名人になれるって言ってるわけじゃない。ツアーをして、曲をプレイしなきゃ。全身全霊を傾けて。そうすればいつか、誰かが気付いてくれる。それだけの実力さえあればね。でも……今時のアーティストはクレイジーなことをやらなくちゃならないし、若いバンドを気の毒に思うよ」
――『ホット・ファス』について聞かせて下さい。あなた自身が気に入ってることは?バンドにとってどういう意味を持つアルバムだったんでしょう?
ロニー「『ホット・ファス』に関して俺が気に入っている点は、短時間で仕上がったってことだね。どの曲も1~2テイクで録音したもので、当初はデモのつもりだったんだ。それがそのままアルバムになったのさ。以来ああいうアルバムは作っていない。たまに、またああいうアルバムを作りたくなるんだ。偶然起きたことがそのまま刻まれるし、その時に鳴らした音がアルバムになる。一旦、曲をある程度練ってヴァイブを確立できていれば、ちゃんと成立するのさ。最近はレコーディングにいくらでも時間をかけられるからね。クレイジーだよ」
バンドとしての10年の経験を踏まえて、自分たちにとって何が重要なのか、どういうバンドへと成長したのか、理解したんだ
――『サムズ・タウン』はどうでしょう?
ロニー「あのアルバムを作った時、俺たちは初めて本物のスタジオで録音したんだ。だから楽しかったよ。長い間、自分たちの頭の中で流れていた音を実際に表現できたわけだからね。『お、ここはもう少しこれを足したほうがいいかな』とか『ここにストリングスを加えようか』という調子で。結果的に、少し凝った音になった。なんでも必要な材料を投入して。……このまま順番に話していく感じかい? じゃあ次は『デイ&エイジ』だね(笑)。あれも楽しかったよ。あの時の俺たちは、たくさん新しい試みをしてみた。そして、ヘタをするとミュージシャンとしても俺たちより腕のいいプロデューサーと組んだから、バンドのメンバーが増えたみたいな感じでね。明らかに音のトーンが変わった。次の『バトル・ボーン』のレコーディングは、ある意味で、自分たちが何が得意なのか見極めるような作業だった。つまり、"俺たちってどういうバンドなんだっけ?"と自問しながら再確認するような作業だった。その成果が、あのアルバムなんだよ」
――それは、レコーディング前に休みをとったからでしょうか?
ロニー「ああ、その可能性もあるだろうね。それもあるし、バンドとしての10年の経験を踏まえて、自分たちが何者で、自分たちにとって何が重要なのか、どういうバンドへと成長したのか、理解したんだろうね」
――ところで、あなたたちはまるで各自異なるバンドに所属しているかのように、バラバラな人たちの集まりですよね。
ロニー「うん。確かにそうだね」
――しかも4人一緒にインタヴューを受けることがないので、4人がどんな風にバンド内で接しているのか、ステージ以外で我々が目にすることはないのですが……。
ロニー「それは秘密にしているんだよ(笑)」
――ザ・キラーズのケミストリーとはどういうものなんでしょう?
ロニー「俺が思うに……家族の一員であるような感じだね。機能不全状態にある家族で、全員それぞれに役割を担っている。全員が同等に重要で、でも全員全く違うんだよ。それでも、ファミリーであることには変わらないってことさ。そんな感じだね。興味深いことだよ……3人の人間と結婚しているようなノリかな(笑)」
――日本公演のあとは数公演を残すのみですが、今後の予定は?
ロニー「俺はサイド・プロジェクトのために曲作りをしているんだ。ほかのこともやってみるかもしれない。ブランドンも自分のソロ作品用に曲を作っているよ。ほかのふたりが何を計画しているのかは分からないけどね」
(インタヴュー:新谷洋子)
- 1
- 2
ディスク情報

ザ・キラーズ『ダイレクト・ヒッツ』
UICL-1126
11月13日(水)リリース
1. Mr Brightside
2. Somebody Told Me
3. Smile Like You Mean It
4. All These Things That I've Done
5. When You Were Young
6. Read My Mind
7. For Reasons Unknown
8. Human
9. Spaceman
10. A Dustland Fairytale
11. Runaways
12. Miss Atomic Bomb
13. The Way It Was
14. Shot At The Night
15. Just Another Girl
16. Mr. Brightside (Original Demo)
17. When You Were Young (Calvin Harris Remix)
18. Be Still
ライヴレポート
6年ぶりに実現した今年10月の来日公演のライヴレポートはこちらから。
ザ・キラーズ @ 新木場STUDIO COAST(10/8 wed)
提供:ユニバーサル ミュージック
企画・制作:RO69編集部