U2

『ソングス・オブ・イノセンス』リリース記念。

U2が成し遂げた「5つの革命」とキャリア徹底総括!

 13枚目となるU2の最新作『ソングス・オブ・イノセンス』が10月22日に国内盤フィジカル・リリースされた。9月に行われたApple発表会でリリースが明らかになり突如iTunesを通じて行われた無料配信で大きな話題を呼んだが、本作は当然、決してそうした話題性だけで語られるべきアルバムではない。世界最高峰のスタジアム級バンドであるU2が、そこに胡座をかくことなくたゆまぬ進化を遂げるという破格のロック・バンドであることをこの『ソングス・オブ・イノセンス』は証明してみせている。すでに様々なメディアで報じられているように、また、アルバム冒頭の楽曲"The Miracle(of Joey Ramone)"が体現するように、本作の制作にあたりU2は自らの音楽的原体験であるパンクへと立ち返った。しかもそのことは、自らのルーツを鳴らすというのではなく、U2が今一度「U2らしさ」と向き合い、前進するための過程として機能している。ポール・エプワースやデンジャー・マウスといった若手の気鋭プロデューサーを起用し、先鋭的なサウンドを採り込みながらも、結果的にU2以外の何物でもないサウンドに仕上がっているのも、そうした精神性の現れといえる。今回の特集では、そんなU2の不変の「変革」にスポットを当てながらキャリアを総括する。(羽鳥麻美)
(文=大鷹俊一)

前進し続けるU2が巻き起こした、

「5つの革命」

政治

イギリスとの間の北アイルランド問題を抱えたアイルランド出身で、ごく初期からメッセージ性の強い曲をレパートリーにしていた彼らにとってチャリティーやエイドへのライヴ出演、協力といった形で行動することは自然であり、常に先頭に立ってきたとさえ言えるグループだ。とくにスポークスマンであるボノはアフリカの経済支援のプロジェクトに積極的に取り組んでおり、先進各国首脳に直談判して支援活動を依頼したりする活動は今も続けられている。

音楽

新作『ソングス・オブ・イノセンス』からの"The Miracle~"で表明しているように彼らの原点はパンク。デビューから初期のグループのサウンドを決定づけたのはディレイを駆使したエッジのギターとゲート・エコーを使ったラリー・マレン・ジュニアのドラム・サウンドであったが、80年代後半にはシンプルな音でゴスペルやソウルなどルーツ・ミュージックに迫り、90年代に入るとテクノやビッグビート、エレクトロニクス・サウンドにも積極的に取り組んでいく姿勢を見せ、さらに近年は原点回帰的な流れとなっている。

リリース、パブリシティ展開

U2はアルバムごと、また時代ごとに明確なイメージを持ち、そこに沿った宣伝やパブリシティ、話題作りを行ってきた。『ボーイ』『WAR(闘)』でのジャケット写真もそうだし、『ヨシュア・トゥリー』のジャケットやMVでは、いまや映画監督として知名度をあげているアントン・コービンを起用したりして、統一感ある世界を創り上げている。90年代は『アクトン・ベイビー』に始まるテクノロジーを取り入れたサウンドを反映してテクノ色の強いジャケットやMVを展開し、新作『ソングス・オブ・イノセンス』ではアップルと組んで大規模な無料配信を行った。

ライヴ

ごく初期からライヴにおけるダイナミックなパフォーマンスは人気であったが、『ヨシュア・トゥリー』の大成功でスタジアム・バンドとなると、数々の意欲的な試みを行ってきた。90年代型U2を宣言した『アクトン・ベイビー』発表に伴った『ZOO TVツアー』では積極的に映像をライヴに組み込んでみたり、巨大なレモン型宇宙船が登場する『PopMartツアー』などが繰り広げられてきたが、最新でもある『360°ツアー』では全方向からステージが見られるセットで行われた(ステージ総重量390トン、設営に4日間と言われ、そのスケールから来日は実現しなかった)。

メッセージ

今回のiTunes配信問題も、「いやぁーゴメン」って拍子抜けするほど簡単に謝ってしまったりと、びっくりするようなコトや発言も、その影響力を考えないでやってしまうある種の純朴さが今でもU2にはつきまとう。「ロック・スターとして2つ、直感的にやらなければいけないことがある。一つは楽しむこと。もう一つは世界を変えること。その両方ができるチャンスが俺にはある」なんていうボノの言葉も、いろいろな形で実践してきた彼らだからこそリアリティがあるし、もちろん彼らも心底、信じているのだろう。

U2を押しも押されもせぬ世界最高峰バンドへと引き上げた

12の代表曲

「グロリア」'81

「グロリア」'81

当たり前だが、めちゃくちゃ若い。しかもやたらと熱い。この熱さこそ初期U2だった。それを衒うことなく、真っ正面から見据える小細工なしのMVなのだが、それがまたこの時代の彼らにとても良く合っている。セックス・ピストルズといいクラッシュといい、この時代のバンドが何かと船の上で演奏したがるのも面白いところ。セカンド・アルバム『アイリッシュ・オクトーバー』('81)からのシングル・カット。

「ニュー・イヤーズ・デイ」'83

「ニュー・イヤーズ・デイ」'83

83年のサード『WAR(闘) 』からの先行シングルで、UKでの最初のスマッシュ・ヒットとなった出世曲。スタジオでシンプルに演奏するだけのものだが、当時のバンドの熱気は伝わってくる。ポーランドの民主化運動に捧げた真面目なメッセージを持ったナンバーで、アダム・クレイトンのくわえ煙草など、どこかパンクの匂いがまだまだするところがこの時代ならではと言える。曲そのものは、いまだに魅力的だ。

「プライド」'84

"New Year's Day"に続き、UK3位と初のビッグ・ヒットとなったナンバーで、全米チャートにも中位ながら顔を出すようになった。4枚目の『焔』('84)からの先行シングルで、射殺されたマーティン・ルーサー・キング牧師について書かれたナンバーはモノクロの画像で展開される。寂しげな港の風景、彼らが実際にたくさんプレイしたであろう地元の講堂風なところでのステージなど、曲のメッセージも含めてグループのアイデンティティを示す映像となっている。

「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」'87

『ヨシュア・トゥリー』('87)からのファースト・シングルで、みごと初の全米No.1を獲得した名曲であり、アルバムも全米チャート9週連続1位の記録となった。モノクロのスローモーション画像を被せる程度で、基本的にはじっくりと歌い、演奏する姿をとらえていくものだが、そのシンプルさがこの曲の特性や魅力を表現するには最適であり、グループのスケール感が間違いなくこの頃から一つのステップを上がったのが確認できる。

「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅)」'87

「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅)」'87

"With Or Without You"に続いて『ヨシュア・トゥリー』からシングル・カットされたナンバーで、これも当然のようにNo.1となった。またグラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤー、ソング・オブ・ジ・イヤーにそれぞれノミネートされている。MVはアメリカの消費文化を象徴するかのようにラスヴェガスのきらびやかなネオンが連なる街角で歌われるもので、ダブリンを出発し、音楽の核心に迫っていく旅を続けるグループの一面を描き出してもいる。

「ディザイヤー」'88

初映画のサントラでもある『魂の叫び』('88)からのシングルで、US最高3位に止まったもののUKやオーストラリアでは初のNo.1ヒットとなった。アメリカン・ルーツ・ミュージック探査をテーマとした時期のナンバーらしくボ・ディドリー・ビートをベースにストゥージズに通じる激しいギター・サウンドを聴かせながらアメリカ南部各地の風景などや演奏シーンを重ね合わせていく。細かなカットアップが楽曲の展開と良く合っていてとても短く感じられるナンバーだ。

「ワン」(バッファロー・ヴァージョン)'91

エレクトロニック・ミュージックへの大接近で話題となった『アクトン・ベイビー』('91)からの3枚目のシングル・カット。ヴィム・ヴェンダース監督の映画に使われた“夢の涯てまでも”と並びアルバムのロマンチックな側面を象徴する美しい名曲。MVはアントン・コービンが監督した“ベルリン・ヴァージョン”やNYのレストランで撮ったものなどもあるが、個人的にはこのマーク・ペリントンが作ったバッファローの疾走を巧みに使ったヴァージョンがとてもU2らしくて圧倒的に好き。彼らの全MVの中でも一番好きかもしれない。

「ディスコテック」'97

「ディスコテック」'97

『ZOOROPA』('93)を経てエレクトロ化の極点となったアルバム『ポップ』('97)からの先行シングル。ミラーボールの華やかな輝きの中にバンドごと飛び込んだような演奏を映像の中で展開する。映画『サタデー・ナイト・フィーバー』を連想するシーンやエロチックなポールダンスなどが流れる中でのハイライトは、メンバーがヴィレッジ・ピープルもどきにゲイのバイカーや水兵、警官、カウボーイなどに扮したもので、4人のダンスが今でも笑える。

「ビューティフル・デイ」'00

90年代のエレクトロ~ディスコ化路線から変わり、原点回帰とも言われた『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』('00)からのファースト・シングル。活動初期の4人のアンサンブルを前面に出したナンバーながら、かつてのような力が入った部分が変わってリラックスした演奏となり、それが逆にスケール感を増している。パリのド・ゴール国際空港でロケしたものと格納庫(=滑走路)での演奏シーンとが巧みに混ぜ合わせられ、アルバム・ジャケットとも自然につながる。

「ヴァーティゴ」'04

彼らのMVの中ではもっともインパクトのあった作品がこれかもしれない。『原子爆弾解体新書~ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』からのファースト・シングルで、まず思い出すのはiPodのCMに使われた映像だろうが、しかしグループが正式に作ったMVはこれではない。スペインの砂漠で、演奏シーンにジェットストリームが作り出すCGを合わせたもので、もちろんあり得ない画像であるが、曲の持つタイトな展開と反応し合って最高に効果的だ。

「ゲット・オン・ユア・ブーツ」'09

前作『ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン』('09)からのファースト・シングル。U2としてのスタンダードを提示したようなアルバムにふさわしく彼らの多様性をイメージさせる映像となっている。“Vertigo”も手がけたアレックス・コルテスのディレクションで、惑星や星雲、溶岩噴出、さらに女神像やヒゲを付けた女性、戦争シーンなど、さまざまなイメージがアットランダムに浮かび上がってくるが、それがU2の歩んできた道のりともどこかつながっているかのようだ。

「ザ・ミラクル(オブ・ジョーイ・ラモーン)」'14

いろいろな意味で大きな話題となったオリジナルとして通算13枚目となる最新作『ソングス・オブ・イノセンス』('14)からのファースト・シングル。じつにシンプルなもので、4人の演奏シーンにイコライジングがかけられている程度だが、ある意味で主人公となっているのは曲のテーマでもあるラモーンズのジョーイやパティ・スミス、クラッシュらの映像であり、それらが重ね合わせられることで曲の意図やU2がこうしたナンバーを作ろうとした思いが浮かび上がってくる。

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提供:ユニバーサル ミュージック

企画・制作:RO69編集部

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