歌でリアルを紡ぐ新存在が羽ばたく!1stシングル『彼に守ってほしい10のこと』インタヴュー

百花繚乱の女性シンガーソングライターシーンにおいて、今後、植田真梨恵という存在は強い輝きを放っていくに違いない。今回リリースされたニューシングル『彼に守ってほしい10のこと』を聴きながら、そう確信した。中学卒業を期に単身で大阪に渡りミュージシャン活動をスタートさせたのが8年前。その後、インディーズから数作を世に放ち、各地で精力的なライヴを続けてきた彼女が、今回のシングルリリースを期にメジャーデビューを果たす。表題曲は女性の恋愛心理を、あくまでリアルに、そしてポップに描き出した植田真梨恵の真骨頂とも言える1曲だ。

そして、これは渋谷のCHELSEA HOTELで先日行われたライヴを観て感じたことでもあるのだが、素晴らしいパフォーマンス力を持ったアーティストでもある。それこそハイティーンの頃から地道に積み上げてきたパフォーマンス力(特にその歌唱力)によって、オーディエンスを一気に自分のフィールドへ引き寄せていたのだ。強い意志と信念を持ってメジャーへと羽ばたく彼女にじっくりと訊いてきた。

(インタヴュー/撮影:徳山弘基)

シンガーソングライターっていう言葉、嫌いなんですよ

──植田さんって、たとえばシンガーソングライター、歌手、あるいはミュージシャン、どう言われるのが一番しっくり来ます?

「うーん……今はシンガーソングライターですね。でもシンガーソングライターっていう言葉、嫌いなんですよ」

──そうだと思った。嫌だろうなって。

「(笑)ちょっと聞きすぎて飽きてきただけなんですけど」

──でも今って、シンガーソングライターブームじゃないですか。

「そうなんですよ。だから嫌なんでしょうね(笑)」

──ひとつに括られるのが嫌なんだ。

「そうですね。そもそも、最初は自分で曲を作ることにこだわりを持っていなかったので。必要性を感じて曲を書き始めて、歌うようになったら、それが楽しくなったっていう感じなので。人に曲を書いてもらっても、めっちゃ歌いたいですね(笑)」

──でもこの国において「シンガーソングライター」っていうのは比較的アーティスティックなイメージがあると思うんだけど。

「『シンガーソングライター』というものの中にも、いろんな人がいるからだと思います。私はわりと昭和の歌謡曲みたいに、きちんと作詞家がいて、作曲家がいて、そこに歌い手がいるっていうのがけっこう好きなんですよ。エンターテインメントとしてバランスが取れているものがちゃんと世に出ていくっていう。本物が基本的に好きなので。ただシンガーソングライターっていうのは、どこかに特化しているじゃないですか。逆に歌が上手すぎたらシンガーソングライターっぽくなかったりするじゃないですか。そういう意味で、本来シンガーソングライターを目指していなかったから、そこに違和感を感じているんだと思います」

──あと「オリジナルであること」っていう意識が高いし、植田真梨恵にしか歌えないことっていうのが音楽活動の源泉になってますよね。

「何かを取り入れようと思ったら、いくらでも取り入れられるじゃないですか。今って特に、何を書いてもある程度それっぽい曲にはなるし、かっこ良くアレンジも作って、パッて出せるじゃないですか。そういうことに私は『ウエーッ』てなってしまうので。その人がやっている理由みたいなものがないと、私は意味がないと思っているんですよ。だから常々、私は偽物じゃないかっていうことを自分に訊いてるし。なるべく自分にしかできないものとか、誰かが言ったようなことを言わないでおこうと思いながら曲を作ってますね」

グチャグチャした女の子の気持ちを表現しながら、あくまで可愛い女の子の歌を作ろうって私は思ったんですね

──ただ、インディーズの時に『退屈なコッペリア』、『葬るリキッドルーム』、『センチメンタルなリズム』、なんていうタイトルの作品を出してますけど、今回のメジャーデビューシングルは『彼に守ってほしい10のこと』。これ、凄くわかりやすくなっているなって自分でも思いませんか?

「思います(笑)」

──個性とかオリジナリティっていう点で言うと、昔のほうがインパクトは強いんだけど、今回メジャーデビューするにあたって、なぜこんなにわかりやすいテーマを持ってきたんですか?

「たくさんの女の子に歌ってほしいと思ったんです。たとえば私のインディーズのときの曲も、ありがたいことにカラオケに何曲か入っているんですけど、それを友達が歌ってくれるんですよ。それを聴いていて歌いづらそうやなあと思ったり(笑)、単純に聴きづらいなと思って。やっぱりたくさんの女の子に歌ってほしいなって思い始めたら、もう少しわかりやすく入ってくるものでないといけないなって思ったんで。あとは繰り返し曲を聴いて欲しいとも思うようになっていて。たとえば高校生の頃に聴いたあの曲、久しぶりに聴いたらすごく好き、なんかいいよねって、思ったりするじゃないですか。雰囲気とか感覚で。それって何度も聴いてきた刷り込みが、思い出と全部一緒になって作用し、そのあとの人生にも関わってきていると思うんで。だとしたら、私の曲も疲れないで繰り返し聴いてほしいなと」

──じゃあ、昔の強烈な自我を押し付けるわけでもなく、ポップなフィルターを通して伝わりやすくしていこうっていう意識が曲を作る段階からあったと。

「それは、とてもあります」

──そうですよね。でもこの曲、すごく植田真梨恵っぽいなって思ったんですよ。『私が彼にしてあげたい10のこと』ではなく、『彼に守ってほしい10のこと』っていうテーマが。

「ほおーー」

──つまり「こうしてあげたい」ではなく、「こうして欲しい」っていう要求の歌なわけで。

「はい」

──つまり植田真梨恵は「束縛こそが愛だ」と、ここで宣言している。

「(笑)面白い」

──それこそメジャーデビューするにあたって、もう少しファンタジックな恋愛を歌うこともできたわけで。それをやらずにリアリズムを貫いたところも、植田真梨恵らしいなと。

「女の子たちに、ライヴの時とかに手紙をもらうじゃないですか。それ、私はすっごく好きで。みんなになるべく自分の恋愛のこととか、個人的な自己紹介、悩みとかを書いてきて下さいって言っているんですよ。で、その女の子たちがカラオケに行った時とかに彼の前でこの曲を歌ってくれたら、みたいなことを考えていて。彼女たちって、『生理前の不安定な時とかに聴きます』とか『今日は眠れないので真梨恵ちゃんの歌を聴いて泣いています』とか、そういうことを言うんですよ。だとしたら、そういうグチャグチャした女の子の気持ちを表現しながら、あくまで可愛い女の子の歌を作ろうって私は思ったんですね」

──なるほどね。女性の持つ毒っぽさをあくまでポップに表現するってことですよね。

「うん。しかも女の子はそこに悪気がないですからね。それに乙女だからこそ、そういうことを思うんですよ。別に悪い女になりたくて言っているわけじゃないんで」

──歌のテーマと同時に、今回はメロディもすごくキャッチーになっていて。新しい引き出しが増えたなっていう感覚もあるんじゃないですか?

「私、曲を聴いた時に『いい曲やけど、覚えられへんわー』って思うことがあるんですよ。特にシンガーソングライターの人が歌う曲で。そう思った時に、なるべく覚えやすいメロディを書こうっていう意識で曲を作ってはいるんです。そのスキルが上がったのか、下がったのかはまったくわからないんですけど、そういう意識はずっとありますね」

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