メジャーデビュー以降、このRO69でもしっかり追いかけてきた植田真梨恵。彼女が完成させたファースト・アルバム、そのタイトルは『はなしはそれからだ』。力強い歌唱力と骨太のメロディライン、そして物語性がある独特の言葉の力が三位一体となった、本当に素晴らしいアルバムだ。新人らしいフレッシュさもありながら、「若さ」や「勢い」だけではない、植田真梨恵の魅力。そのすべてが詰まったこのファーストが、しっかりとシーンに広がっていくことを切に願う。本人にじっくりと話を訊いてきました。
やっとこれが植田真梨恵の1枚ですと渡せるものになった。それはセルフディレクションで作ったアルバムだからだと思います
──ついに完成しました1stアルバム。
「はい」
──まずタイトルが最高ですね。
「良かった。ありがとうございます」
──すごく植田真梨恵らしいタイトル。
「ダメかなあと思って持ってったタイトルが、意外とスッと通りました(笑)。友達に言っても『えっ、それ会社OKやったん?』みたいな」
──かなり前から、1stアルバムのタイトルはこれだって決めていたんですか?
「前から決めていたってわけではないんですけど。ただ、常日頃から曲のタイトルにしたい言葉は、いろいろ考えてはいるので。その中でふと『はなしはそれからだ』っていうタイトルが浮かんだんですね。もうその時には、アルバムに着手していたんですけど、このタイミングでアルバムタイトルに良いかもなあぐらいには思っていて。で、メールで(マネージャーの)佐藤さんにお送りしたんですけど、特にバンッていうリアクションもなく。通ったのかなあって思っていたら、通っていたっていう感じでした(笑)」
──ちなみに今回のアルバムには13曲が入っているんですけど、アルバムを作ろうと決めて制作がスタートしたのか、それともいろいろ曲が集まったから、アルバムにしようなのか?
「アルバムを作ろうですね。流れ自体はある程度決まっていたので。アルバムの曲とかも、実際はメジャーデビューのタイミングから動いてはいました」
──じゃあ、メジャーデビュー以降の植田真梨恵の総決算と言ってもいい作品?
「いいと思います。で、個人的には初めてのオリジナルアルバムができたという気持ちです。やっとこれが植田真梨恵の1枚ですと渡せるものになった。これまでのアルバムとは、ちょっと扱いが自分の中で変わったなと。それはセルフディレクションで作ったアルバムだからだと思います」
──つまり自分の100%がこのアルバムの中で表現されている?
「そうですね。どこを責められても私が悪いですね」
──(笑)。だからこそ、このタイトルがつけられるっていうことだね。
「そうです」
──通して聴いて感じたことなんですけど、これまでのシングル2枚では表現されていなかった植田真梨恵が、ちゃんとこのアルバムには込められていますよね。作った本人としてもその意識は強かったのかなって思うんですけど、そこはどうですか?
「強かったですね。2曲目の"FRIDAY"っていう曲をずっとリードにしたくて。ずっとそれを中心に曲を組んだつもりなんです。自分の中ではシングル2枚でも、歌が真ん中にあって、かっこいい素敵なものっていう、シンプルに作っていってるつもりなんですけど。その中で動いていきますっていうところを"FRIDAY"には込めているので。そういう基準で作りました。あとメジャーになって変わった部分っていうのは、自分のために書いている曲ではなく、聴く人のために書いた曲がすごく多くなったところで。なので、どの曲を取っても、その人が何回も聴けるとか、その人に良い効果が生まれるとか、そういうところを意識して曲を作っているんだなと思いました」
──いろんなアーティストにインタヴューすると、だいたいみなさん今のような優等生な回答を下さるんで、非常に嬉しいんですけど──。
「本当に思ってますよ」
──もちろん心からの気持ちだとは思うんだけど。
「ふふふ」
──でも、そういう気持ちだけでこのアルバムはできていないと僕は思っていて。
「おもしろいですね」
──つまり絶対に負けたくない、勝ってやるっていう作品なんですよ、今回のアルバムは。
「ああー。かなあ」
──でも実際にそういう曲を書いているよね。
「なんか占いに来たみたい(笑)。いや、でもそうかもしれないです。ただ自分でわからないところでやっていることがあまりにも多くて。でも確かにそうですね。"支配者"とか──」
──そうそう。
「もちろん自分自身の勝負と思って書いているんですけど、聴いた人が、今日しんどいな、頑張ろうとか思っている時に聴いてもらえる曲にしたいとは思っていたので。もちろん私もここからっていうところはすごく強いです。そうか、だからそういう曲になったんですね」
──最高ですよ、この曲。
「良かった」
──普通書かないよ。全然1stアルバムっぽくない。でも植田真梨恵のアルバムで、"支配者"みたいな曲がないと僕は嫌です。
「ははははは。私、正攻法があるなら教えて欲しいんですよ。でも本当に良い意味でも、悪い意味でも、こうしたらいいよっていう大人が今、私のチームにはいないんですよ。なので、本当にこれが良いんだろうなって思うことを手探りで。その中で今は舵を取らしてもらっているっていう感じなので」
──自由に泳いでいる感じなんだね。
「そうですね。本当になるべく素敵なものになるようにと思って作っています」
何でか、説教臭い曲が嫌になるんですよね。嘘くさいし、あと色っぽくないですよね。説教くさい曲って色気がない
──ただ大人のディレクションなしで、本当に自分のジャッジが優先されて形になると、それはそれで迷って、重圧を感じることもあったのでは?
「最初はありました。でも作っていくうちに、曲が出揃ってきたタイミングですごく良い感じになったので。本当に出来あがって聴くまではよくわからなかったんです。曲順を決めたりするタイミングで、自分ひとりで何回も聴くじゃないですか。その時にめっちゃ聴けたんですよ。自己満足的な言葉なんですけど、何回も聴けたので。しんどくないなと思って。個人的に好きと思えるものがちゃんとできたからですね。それに賛同してくれる人がたくさんいたらいいなと思いながら組んでいったので。そのぐらいのタイミングから、だいぶ楽になりました」
──曲の話に戻りますけど、この "支配者"は本当に素晴らしくて、とくにこの言葉がよく書けたなと思って。どんなタイミングで歌詞やメロディが出てきたんですか?
「最近書いてなかった、大きいバラードが書きたいなと思ったんですよ。その中で歌うとしたら、"FRIDAY"に続いて頑張ってる人を応援できるような歌にしたいなと。ただ私の場合、そういう曲が説教くさいと辛くなるし、歌えなくもなるので。何か自分自身もちゃんと思っていることで、自分にも歌えるぐらいの気持ちで書こうと思って、これは書きました」
──説教くさいのが嫌いっていうのは、それこそ昔のインディーズの時からそうだよね。
「うん。何でか、説教臭い曲が嫌になるんですよね。嘘くさいし、あと色っぽくないですよね。説教くさい曲って色気がないですよね」
──何でこのタイミングで、この曲が書けたんでしょうか?
「でも本当の、本当の話をすると、たまたまそのぐらいの時期に、コンペ的CMタイアップの話があって。専門学校に通う子たちのCMの曲が書けたらみたいな話があって。で、まあそれも視野に入れながら書いた曲だったんですね。何か本当に立場的には自分のように夢を目指して頑張っている人たちのことをすごいうーんって具体的に想像して書いた曲なんですけど」
──でも普通そういうタイアップのオーダーが来た時にさ、もうちょっと小綺麗な言葉でまとめたり、それこそ少し説教くさいぐらいにしたほうが、わかりやすかったのかもしれないよね。
「したほうがよかったですよね(笑)。そう思うんですよね。でも何かどうかな、私はあんまり、言い切ってない気はしてるんですけどね」
──ただ自分らしい歌詞だと思わない?
「思います」
──そうだよね。
「でもそうじゃないと。私が歌っている歌なので、それはそうじゃないと。っていうか、書けないんです、私は。普通に書いてっていわれたとしても、たぶん普通だから。これで出すと思うんですけど」
──たとえば「逆上がりやってみて」って言われても、やっぱり人とは違う回り方でしかできないんだよね。
「だと思います。逆上がりできないんですけど」