FIVE NEW OLD メジャーデビュー作『BY YOUR SIDE EP』に薫る「80's」の理由、そして届けたい音楽の意志を語る

FIVE NEW OLD メジャーデビュー作『BY YOUR SIDE EP』に薫る「80's」の理由、そして届けたい音楽の意志を語る

規模感がどんなに大きくなっても、お客さんとひとつになれるような曲を書きたい


──『BY YOUR SIDE EP』、4曲それぞれの楽曲が心地好くて、ついずっとループして聴いてしまいますね。今作がメジャーデビュー作ということで、これまでと気持ちの上での変化はありますか?

「バンドとして『メジャーだ』っていう感覚はそんなに強くなくて、まわりに『おめでとう』とか言われることで自覚したりしてます(笑)。それにともなって、『音楽を仕事にしていくんだな』っていう感覚が強くなったというか──仕事と言っても割り切った感覚ではなくて、これでごはんを食べていくんだなあっていう感じですね」

──制作に関しての変化は?

「プロセス的に大きな変化はないんですけど、リードトラックの“By Your Side”では、アレンジャーでしゅんくん(Shunsuke Kasuga)が入ってくれたりとか、これまでやったことのないことに挑戦するっていうのはありました」

──今回、“By Your Side”でKasugaさんが共同プロデュースとして入ったのはどういう経緯だったんですか?

「この曲を作る時にすごく悩んで、スランプって言うのかな──書きたいものに迷いが生じている時があって、『ちょっと書けないです』ってディレクターさんに言ったら『じゃあ、ごはん食べにいこうか』って言ってもらえて、その時ちょうどしゅんくんが来てたから、『紹介するよー』っていう流れでした。最初は飲みながら、『曲ができない時はどうしたらいいですか?』とか、相談してただけなんですけど、その後、少し曲作りが波に乗り出した時に、それでもまだ確実な何かをつかみ取れてなかったので、一緒にやってみたら何か新しい発見があるかもしれないなと」

──リード曲を作る時に悩んでいたんですか。それはどういう部分で?

「この曲を書く時に、ひとつ新しいことにチャレンジしてみようというテーマがあって、リズムは4つ打ちとか、わかりやすいものじゃなくても、今後僕たちが、より大きなステージに立たせてもらえるようになって、1000人、2000人、10000人と規模感がどんなに大きくなったとしても、どこでもお客さんとひとつになれるような曲を書きたいという思いがありました。だったらゴスペルかなとか、どんなタイプの曲がいいのか探りながら曲作りに挑んだんですけど、やりたいことが多すぎてまとまりがつかなくなって、どう終着点を見つければいいのか迷ってしまっていたんです。どんどんのめりこんで、わからなくなってしまったから、客観的に意見を言ってくれて、ソングライティングのできる人にアドバイスをもらいたいなあっていう話になって。結果としては、このタイトルにあるように、僕たちの音楽によって、お互いが近づけるような曲になったんじゃないかなと思っています」

──なるほど。HIROSHIさんの中で、とっ散らかってしまっていた思考を整理する必要があったんですね。

「もう、かなり散らかっていましたね。この曲に対して7〜8パターンくらいアレンジを考えていたんですけど、考えすぎて頭でっかちな状態が続いていたんです。それを、『じゃあこのパターンのここはいいと思う』とか『こことここはつなげられそう』とか、しゅんくんが客観的にまとめてくれたのを聴いて、ああ確かになと思う部分がいっぱいあって。僕自身が、この曲に対して一歩引く時間を与えてもらえたのでよかったですね。良いはずなのに良いと思えていなかったことにも、ちゃんと『これはありだ』と思えるような時間を与えてもらったという感じ」

蓋を開けてみたら7年間自分たちが作ってきた楽曲の集大成になっていた


──FIVE NEW OLDにしても、HIROSHIさん個人にしても、やりたいこと、トライしてみたいことが本当にたくさんあるからこそ、そういう迷いに直面したと思うんですけど、この曲ができたから、今回のEPのコンセプトも固まったという感じですか?

「逆なんですよね。他の3曲は前からある曲で、去年『WIDE AWAKE EP』を作り終えた段階で、すでに書き始めていた曲なんです。その3曲に関しては、やりたいことが明確に見えていて、それぞれに違うタイプの曲なので、それをひとつにまとめあげるような1曲がほしいというところで、“By Your Side”に取り掛かったんです」

──今作はそれぞれに違った魅力の楽曲が並んでいながら、全体としては夏っぽくて、ブラックミュージックの心地好さや80’sっぽい自由さが漂っているような気がします。

「今やりたいのがこうだったというだけで、もしかしたら次の作品ではまた変わってる可能性もあると思います。スタンス的には、例えばレディオヘッドみたいに、やりきったことはもうやらない、みたいなところがあるので、自分の中でもうやりきったなと思えば変わっていくだろうし。だから今作は、自分たちが今やりたいと思った4曲を並べたっていう感じです」

──手応えというか、できあがってみてどんなことを感じましたか?

「やりたいことをやらせてもらったなあっていう感じがすごくあります。“By Your Side”は新しいことに挑戦させてもらったんですけど、出来上がって蓋を開けてみたら、7年間自分たちが作ってきた楽曲の集大成みたいになっていて、すごく面白いなあって思いました。ゴスペルやソウルのリズムがベースにありつつ、Cメロで表打ちに変わるところとか──もともとN.E.R.D.の“Sooner or Later”っていうサビが表打ちになる曲があって、その雰囲気をベースにして書いてたんですけど──それをやってみたら、自分的にはオアシス的な感じもあるなあって。そこだけすごくロック感が強かったり、でも基本的にはグルーヴ感があったり。自分たちのルーツを1つの曲に詰めることができたなあと思います。意図せず作っていても、やっぱり自分の中に今まで蓄積されたものが自然と出てきて、曲から教えられることって多いなあといつも思います。自分のことって実は自分では全然わかってなくて、アウトプットしたものに自分自身のことを教えられているような気がしますね」

──無意識のうちに、自分の中にあるものが溢れ出して、すべてアウトプットしたかったんでしょうね。だからまとまりがつかなくて悩んでしまったというか。

「バンドとして自然に出てきた結果なんだなあって思います。あんなにまとめるのに苦労してたはずなのに、出来上がってみれば、すごくFIVE NEW OLDっぽいなあって」

──FIVE NEW OLDのアンセムとして今後も大切にされるような曲だと思います。これを完成させたことは、ひとつ新たな自信にもなったのでは?

「そうですね。もっともっと面白いことができるっていうか。自分の中で『こうじゃなきゃいけない』って思っていた固定観念を壊せるんじゃないかなって。このグルーヴだからこのリズムは違うとか、そういうのをもっと取っ払ってやれそうな気がしました」

次のページまだまだ欲求不満です。毎回出し切ってはいるけど、それでもまだ満たされない
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