1995年に結成され、日本のスカパンクのパイオニアとなったKEMURI。ロックシーンに多大な影響を与え続けている彼らが、CDデビュー20周年を記念して、初期の4作品と1枚のベストアルバムに最新リマスタリングを施してリリースする。躍動するホーン、シャープなビート、瑞々しいメロディがまぶしい。このバンドの魅力が改めて様々なリスナーに届く絶好のきっかけとなるだろう。この再発を記念してKEMURIの津田紀昭(B)と、HEY-SMITHの猪狩秀平(Vo・G)の対談を行った。少年時代からKEMURIを聴いていた猪狩の熱い言葉の数々からも、このバンドの偉大さがよくわかると思う。
インタビュー=田中大 撮影=齋藤毅
僕らが90年代に始めたものを進化させたのがHEY-SMITHだと感じる(津田)
津田 初めて会ったのいつだっけ? 僕が覚えてるのは、KEMURIが解散中の時だけど。2010年か2011年くらいかな? 浜松での誰かの企画ライブだったと思う。
猪狩 GELUGUGUかもしれないです。THE REDEMPTION(津田がやっているもうひとつのバンド)で?
津田 うん。そこが初めてだった気がする。
猪狩 ほんまの最初は、新宿のACBとかだったかもしれないです。たしかシークレットで、THE REDEMPTIONのライブの1回目か2回目の時です。
津田 あの時、一緒だったけ?
猪狩 そうなんですよ。その後も、いろいろな場でご一緒させて頂いています。
──猪狩さんは、少年時代からKEMURIを聴いていましたよね?
猪狩 もちろん聴いてました。日本のスカバンドで、最初に聴いたバンドがKEMURIやったんで。他にもいろいろ聴きましたけど、一番かっこいいと思ってました。
津田 ありがとうございます(笑)。GELUGUGUのベースのPARAくんの高校の後輩でしょ? GELUGUGUディスってる?
猪狩 他のバンドをディスってるわけじゃないです(笑)。
津田 THE REDEMPTIONのギターの龍馬くんも高校の先輩?
猪狩 そうです。俺が一番後輩なんです。龍馬くんは俺が高1の時、高3やったんですね。一番怖い感じの人で。
津田 なるほど(笑)。
──津田さんはHEY-SMITHをどのように感じていました?
津田 我々より若い世代が新しい感覚でやってるバンドだと感じてました。僕らじゃ考えつかないようなオリジナルな感じがしましたから。
猪狩 嬉しい!
津田 僕たちがKEMURIをやりだした時も、いわゆるオーセンティックなスカの人たちとは違う感覚だったんですよ。「スカじゃない」って言う人もいたから。
猪狩 そうなんですね。
津田 たしかにKEMURIはスカじゃなくて、スカパンクだからなんだけど。僕らが90年代に始めたものを進化させてオリジナルなことをやってるのがHEY-SMITHだと感じてます。スカパンクはなんでもありですからね。僕はメロディックパンクもすごく好きで、「裏打ち入ってねえじゃないか!」って曲ばっか作ってた頃もあったし。
猪狩 俺は、そういうとこも含めて好きでした。KEMURIからたくさん吸収しましたよ。HEY-SMITHは「聴いたことのない音楽をやりたい」っていうのがあって、最初の頃なんて裏打ちの曲は全然なかったんですけど、スカのイベントとかに呼んで頂くと、受け入れられにくい感じがありましたね。あと、メロディックのイベントに出ると、「管楽器が入っててようわからん」と(笑)。
津田 狭間で戦ってきたんだね。でも、そういうのがあるっていうのが、ひとつ飛び抜けるための要素なのかもしれない。
猪狩 今となっては、そういう時期があって良かったと思います。
俺が一番再生したのは“five o'clock at night”です(猪狩)
──KEMURIは、ロードランナー時代の作品が5枚、再発されることになりましたね。
猪狩 この再発、すごいですね。KEMURIのアルバム、全部聴いてましたよ。
──思い出の曲はあります?
猪狩 “PMA (Positive Mental Attitude)”とか“Ato-Ichinen”とかは、一旦置いておきましょうね。
津田 一般的すぎるから?
猪狩 はい(笑)。多分、俺が一番再生したのは“five o'clock at night”です。
津田 おっ、ナイス! 俺も大好き。
猪狩 めっちゃ好きなんですよ。最初、シングルで出ましたっけ?
津田 そう。最初、短いのにこだわって作ったんだけど、解散のタイミングのベストアルバムの時に、「俺、この曲好きだから、長くしていい?」って言ったんだよ。
猪狩 『BLASTIN'!』(2007年にリリースされたセルフカバーアルバム)に“five o'clock at night”が入ってましたよね?
津田 うん。あれがロングバージョン。
猪狩 “five o'clock at night”は、ホーンセクションが切ないんですよね。この曲、メロディラインが泣けます。
津田 それは嬉しいなあ。意外と裏ヒット曲みたいな感じだから。あんまりみんな知らないんですよ。一応、PVも撮った曲なんだけど。
猪狩 HEY-SMITHのメンバーは、“five o'clock at night”が好きなやつ多いです。
津田 まじ? そりゃあ嬉しい。
猪狩 KEMURIって明るいイメージがあるんですけど、こういう切ない曲もいいんですよね。俺、“In The Perfect Silence”も好きです。ああいう「キュン」っていうのが好きなんですよ。
津田 胸キュン系は、南(2013年まで在籍していたギタリスト・南英紀。横山健のKen Bandのメンバー)が得意だった。“In The Perfect Silence”は、まさに南が作った曲なんだよ。いまだにライブでやると、すごく盛り上がる。
猪狩 やっぱそうですよね。ライブで聴くとめっちゃ気持ちいい曲ですから。
津田 南も俺もパンクが好きだから、“In The Perfect Silence”とか“five o'clock at night”は、そういうところも出てるんだと思う。