KEMURI・津田×HEY-SMITH・猪狩のスペシャル対談! スカシーンからバンド愛まで語り尽くす

KEMURI・津田×HEY-SMITH・猪狩のスペシャル対談! スカシーンからバンド愛まで語り尽くす

KEMURIが大阪に来る度に観に行ってましたから(猪狩)


──昔のKEMURIの曲を聴くと、いろいろな記憶もよみがえるんじゃないですか?

猪狩 そうですね。曲名を見るだけで、いろいろ思い出します。KEMURIが大阪に来る度、BIG CATとかに観に行ってましたから。

津田 喋ったことはないよね?

猪狩 喋ったことはないですね。出待ちをして、ふみおさん(KEMURIのボーカリスト・伊藤ふみお)に話しかけたことは1回ありますけど。おっしゃってる意味がなかなか汲み取れなくて、「もう出待ちやめよう」って思ったんですけど(笑)。

津田 そうだったんだ(笑)。

猪狩 友だちと3人くらいで出待ちしました。みんななかなか喋りに行けなかったけど、俺は行ったんですよ。「今日は楽しかったです。ありがとうございました!」って言って、握手して頂きました。それだけで嬉しかったんですけど、「僕のほうこそありがとう。今、きみがかいた汗が蒸気になって、それでまた僕と同じ空間に」……みたいなことをおっしゃって。

津田 たしかに、意味が汲み取れないな(笑)。でも、子供たちに何かを伝えたかったんだと思うよ。

猪狩 当時、中3くらいやった俺には哲学的すぎたんです。

津田 なるほどね(笑)。

──KEMURIは昔から海外のツアーもやっていますし、HEY-SMITHも今年の2月にアメリカツアーをやりましたよね。海外でのライブにも積極的であるという点で、相通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

津田 ほんとそうですね。アメリカのツアーは、結構長かったでしょ?

猪狩 はい。3週間くらいでした。

津田 アメリカは初めて?

猪狩 2回目です。でも、1回目はイベントに出ただけなので、ツアーは初めてでした。

津田 やっぱ、アメリカでツアーをやって何か変わった?

猪狩 変わりました。メンバー同士が仲良くなりました。全員で新しいことをしたツアーでしたから、一緒にスタートしてギュっとなった感じです。

津田 すばらしいねえ。ツアー中にトラブルはあった?

猪狩 トラブルばっかりでした。アメリカ人って、なんであんな適当なんですか?

津田 そうなんだよねえ(笑)。

猪狩 用意してくれることになってたはずの機材が用意されてなかったり。「なかったら持ってくけど、大丈夫?」って事前に言ってたのに。当日に行ったら、「そんなのない」って(笑)。そういう毎日でした。

津田 でも、そういう環境でやることで強くなれるからね。KEMURIも最初にアメリカ行った時に、アンプがなかったりしたんだよ。

猪狩 ええっ!? どうするんですか?

津田 モニターとラインで表には音が出てるんだけど、本体のアンプがなかったの。

猪狩 うわあ(笑)。

津田 一緒に出るバンドのアンプを借りる予定だったんだけど、そのバンドが遅れて会場入りしたんだよ。アメリカに最初に行った頃は、KEMURIは前座みたいなもんだったからね。そんな事情で、アンプなしでライブ。

猪狩 たしかに、遅れて来るとか当たり前な感じでしたね。この前のアメリカツアーはオーソリティ・ゼロがメインで、俺らはゲストだったんですけど、大体、各地の地元バンドがひとつ、ふたつ出ることになってたんです。でも、その地元バンドが、当日に出演キャンセルになることがよくありました。「なんで?」って訊くと、「なんかキャンセルするって言ってるから」って(笑)。

津田 いいなあ(笑)。そういうところがアメリカだね。

猪狩 「お前らのギャラが増えるよお」って(笑)。

津田 でも、アメリカツアーは、初めて行った時からすごく有意義だったよ。最初に行った時は、Lookout!Recordsっていうパンク系のレーベルから出してたパンジー・ディヴィジョンっていうバンドとかが対バンだったり。いろいろ面白かったなあ。

猪狩 アメリカ行くと、日本で聴いてたバンドの人に会ったりしますけど、「ほんまにおるんや!」ってなりますよね。俺らのライブもゼブラヘッドとかデス・バイ・ステレオのメンバーが観に来たりしました。カウンターで酒飲んでたから話しかけたら、「今日出る日本人? 聴きにきたで」って言われて、「嘘やん⁉」って(笑)。あと、ペニーワイズのドラムも来ましたよ。俺、ペニーワイズの大ファンやったんですけど、俺らの曲でモッシュし狂ってくれました(笑)。ほんま仲良くなって、2日くらい前も「今年、サマーソニックに出るから、一緒に飲もうよ!」ってメールでやり取りをしました。そういえば、KEMURIはアメリカのスタジオでレコーディングをしていますよね。その話もお聞きしたいです。どこのスタジオでしたっけ?

津田 コロラド州。

猪狩 ディセンデンツのブラスティング・ルーム・スタジオですね。どんな感じのレコーディングなんですか?

津田 ディセンデンツのビル(ビル・スティーヴンソン。ディセンデンツのドラマー)は、歌とコーラスを徹底的にジャッジしてプロデュースするスタイルなんだよ。あと、それぞれのパートにエンジニアがいるの。

猪狩 ばり効率的! 俺、ブラスティング・ルーム・スタジオで録った音が、めっちゃ好きなんですよ。

津田 行ったらいいじゃん。

猪狩 行きたいなあ。NOFXもあそこで録ってるんですよね。あそこのスタジオの音は、ダイナミックで気持ちいいです。

津田 パンクロックを知ってる人が作り上げてるスタジオだからね。だから普通のエンジニアじゃわからないような感覚も理解してくれるんだよ。

猪狩 いいなあ……なんかすごく細かい話になっちゃってすみません(笑)。

解散があったからこそ、今KEMURIを楽しくやれてる(津田)


──KEMURIは1回解散して、HEY-SMITHも休止期間があったじゃないですか。そういう波乱を体験した点でも、両バンドは共通項がある気がするんですけど、いかがでしょう?

津田 なるほど。KEMURIの場合は今だから言えるけど、ひとりひとりの方向性というか、それぞれが思い描いてるKEMURIの姿っていうのが、だんだんとズレてきたのが、あの時の解散の理由なんですよね。お互いの価値観が違いすぎちゃって、メンバー同士で話もできなくなって、重たい空気での解散だったから。でも、あれがあったからこそ今があるんだと思う。ほんと今、KEMURIを楽しくやれてるんです。

猪狩 なんで活動休止じゃなくて、解散にしたんですか?

津田 「もうできない」と思ったからだね。ふみおくんが自分で解散を言い出したんだけど、僕も「このまま続けるのは無理かな」って思ってたから、遅かれ早かれそうなってたと思う。

猪狩 もう1回やることになった理由は、何やったんですか?

津田 Ken Bandの南が「東北でAIR JAMをやるんですけど、健さんが『KEMURIやんないかなあ』って言ってるんですよね」っていう話が来たの。それで僕が「俺的には全然やりたいけどね」って言ったら、南が「じゃあ、ふみおさんにも言ってみますね」と。その流れからふみおくんと久しぶりに話をしたら、「やるのはいいんだけど、再結成一発だけだったら、やりたくないかな。やるんなら腰据えてイチからスタートする感覚でやらないと意味ないよ」と。それで、2012年のAIR JAMで復活させてもらったんです。

猪狩 バンドって、メンバー同士の意思疎通が上手くいかなくなる時があるんですよね。声かけなくてもいい感じの時でも、わざわざ喋りかけないと、距離が離れちゃう気がします。実は、俺らも最近危なかったんです。

津田 そうなの?

猪狩 はい。アメリカツアーをやって「仲良くなった!」って帰ってきたんですけど、日本にいるとそれぞれの友だちとかフィールドがあるじゃないですか。それで、「あれ? 最近喋ってない」ってなったんですよ。だから、コミュニケーションって大事やと思います。

津田 ほんとそうだと思う。喋らないと誤解もいろいろ生じるからね。

──KEMURIは、こうして過去の作品が再発されて全国ツアー中ですし、HEY-SMITHもシングル『Let It Punk』をリリースしますし、ファンは安心しているんじゃないでしょうか。

猪狩 休止とか解散はないってことですもんね。俺らは、今は大丈夫ですよ。でも、「俺らはいつ何があるかわからないからな」って言っておきましょう(笑)。

津田 まあ、バンドって、いつ何か起こるかわからないものなんです(笑)。

猪狩 でも、ほんま、KEMURIが活動を再開して嬉しいです。俺らがたくさんライブをし始めた頃に解散しちゃったので、「一生対バンはないんや」って思っちゃってたんですよね。だからAIR JAMで復活した時はめっちゃ興奮しました。再結成後の一発目のアルバムと、俺らのアルバムだったかシングルだったかが、CD屋で横に並んでたのを見たんですよ。そん時、俺、普通に泣いてましたもん(笑)。「KEMURIが新しいのを出しとる! しかも、俺らのCDと一緒に置いてある!」って。その後に対バンもさせてもらって、ほんまに嬉しいです。

津田 ありがとうございます。そういう思いを受けて、我々はくたばるまでやろうと思います(笑)。「日本で50歳を過ぎて、スカパンクバンドをどこまで続けられるか?」っていう壮大な実験です。俺らがよぼよぼになっても、HEY-SMITHがツアーとかに誘ってくれたら嬉しいですよ。ふみおくんは「年を言い訳にしない」って言ってるから、ガンガンいくよ。

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