「永遠に中学生」というテーマを掲げ、「King of 学芸会」を自称するなど、独特の存在感を放ち続けている私立恵比寿中学。彼女たちの楽曲がとても魅力的なことをご存知のロックファンも多いはずだ。最新シングル『でかどんでん』も、開放的に盛り上がれるパーティーチューン、「中学生」として活動している彼女たちの熱い心意気が迫ってくるラップなどで大いに楽しませてくれる。このポップスは、刺激的な音楽を求めている全ての人にとって非常に楽しい世界であることを、このインタビューを通じて感じ取ってもらえたら嬉しい。
インタビュー:田中大
大人になるといろんなルールに縛られることがありますけど、中学生はそうではないんです(安本)
——メンバー全員が中学生……ということでいいんですよね?
全員 はい!(笑)。
真山りか 私立恵比寿中学は2009年8月に結成された、現在、現役中学生が誰ひとりとしていない6人組のアイドルグループです。
——真山さんは何年生?
真山 中学10年生です。私、多分、中学生界のトップだと思います(笑)。ほんとにいいタイミングでメジャーデビューさせてもらえて、なんとなくアイドルの波に乗っていたらここまで生き残ってこれたっていう感じで。
——安本さんはエビ中に入る前、どんな印象で見てましたか?
安本彩花 私はずっとエビ中に入りたかったんですよ。元々違うスターダストのグループに入ってたんですけど、「楽しそうなグループだな」って思ってて。
真山 そうだったの? 初めて知った(笑)。
安本 「うらやましいなあ」って思ってて。入ってからは、メンバーがすごい仲良しだし、アイドルだけどいろんな楽曲を歌わせていただくのはすごい経験で、楽しいグループです。
星名美怜 私は事務所に入って何ヶ月後かに、エビ中=アイドルってことがはっきりわからないまま加入しちゃったんですよ。でも、それまで何もできなかった私たち、普通の女の子が、グループに入ることによって急に初めて人前に出たり、誰でも経験できないような、フェスや大きな会場でのライブの光景というのは、本当に貴重なものだなって思います。
——普通の人の人生で、「武道館に立つ」っていうのは、まあないですからね。柏木さんはどうですか?
柏木ひなた 最初、エビ中に入る前に、ライブを見学させていただいたんですよ。アイドルって、グループ内でバチバチしてるイメージがあったんですけど、全然そんなことなくプライベートでも仲良くて。ケンカもまったくしないし。
真山 でも、最近はようやく自分たちの意見もメンバー同士で言い合えるようになってきて、ここ数年でやっとグループらしくなってきたなって感じてますね。
——それぞれのキャラクターがいいバランスで立っている6人なんですね。小林さんはどうですか?
小林歌穂 さっきの話ですけど、仲良しだけど近すぎない、ちょうどいい距離を保ってるから、エビ中が平和でいられるなって思います(笑)。あと、ライブになると「おりゃー!」って熱い感じで伝えようとする、メンバーとお客さんとの距離感もいいなって思います。
中山莉子 私は、アイドルだけどメッセージ性の強い楽曲も歌ってるし、今回の“でかどんでん”みたいに意味のないような——。
全員 はははは!(笑)。
中山 (笑)「やってやるぞー!」っていう勢いのある曲もあって、振り幅がすごいなって思います。
——音楽的な部分でもお客さんに楽しんでもらっていますよね。初期は「キレのないダンスと不安定な歌唱力」がキャッチフレーズでしたし、永遠に中学生ですし、ずっと個性的な存在感を放ち続けているグループですよね。
星名 はい。活動の初期の段階で「個性を活かすか、個性を直して全員の歌やダンスを揃えるか?」について大人の間で会議があったらしいんですけど、個性を活かしていく方向になった結果、今みたいな感じになったんです。
真山 マイナスの部分を前面に打ち出しちゃったことによって、逆にそこから上がっていくしかなくなったんですよね。成長過程を楽しめるグループだなって感じてます。
星名 いろんなことがありましたけどね。「TOKYO IDOL FESTIVAL」の大きいステージに出させていただいた時、全員でキョンシーの格好をしたり(笑)。
真山 白塗りのメイクは一時、スタッフたちがハマってましたね(笑)。ちょっと変わったことをする英才教育を受けてきたので、「ほかの人と比べてちょっとズレてるのかな?」と、最近になって気づくようになりました。
安本 なんか育ち方が違ってたみたいです(笑)。
——「メンバーが全員中学生である」というコンセプトも、画期的ですよね。
真山 元々期間限定ユニットとして始まって、「中学を卒業したらやめるのかな?」って思ってたんですけど、“永遠に中学生”(インディーズ5thシングル『もっと走れっ!!』収録)という曲ができて、「あれ? これ、永遠に続けるぞ?」って、びっくりしたんですよ。
星名 「永遠に中学生制度を採り入れます!」っていうイベントもやって。メンバーと一緒にいる時は、ずっと学校っぽいですからね。
柏木 「中学生」って言い続けてることによって、「ガキ感」みたいなのがみんなの中にずっとあるんです。
安本 ほかのアイドルさんと一緒にテレビとかに出演させていただくと、私たちのクソガキ感が際立つんですよ(笑)。
中山 同い年の子たちとたまに集まった時も、「みんな大人だなあ」って感じます。進路のことを話してて、「もうそんな時期なの?」って思うので。
——取材を始めて数分の印象ですと、小林さんが一番落ち着いていて、大人っぽい印象ですが……。
小林 みんながたくさん話してるので、様子を見てるんです。
安本 ひとりだけ大人ぶってますが、猫被ってますね(笑)。
——小林さんは、絵を描くのが好きらしいですね。
小林 はい。学校の授業中も、ずっと絵を描いてます。
星名 ちゃんと授業を受けてください!(笑)。
——(笑)。中学生であり続けることの魅力ってなんだと思います?
安本 ずっと自由な発想ができるところだと思います。大人になるといろんなルールに縛られることがありますけど、中学生はそうではないんです。エビ中も自由な発想をしていきたいと思ってます。
何かひとつのものに偏らずにいろんな曲を歌えるのがアイドルの魅力(真山)
——エビ中は中学生道を極める活動の中で、音楽的な魅力も深めてきましたよね。
真山 ありがとうございます。メジャーデビューする前は、前山田先生(前山田健一/エビ中の音楽主任)が曲を作ってくださってたんですけど、メジャーデビュー以降は、いろいろなアーティストの方々に楽曲提供をしていただいてます。
星名 メンバーはみんな人見知りなので、フェスのバックステージとかでアーティストのみなさんにお会いしても、「曲を作ってください!」って言えないんですよ。
真山 スタッフの人脈に頼ってます(笑)。何かひとつのものに偏らずにいろんな曲を歌えるのがアイドルの魅力ですし、私たちもそうなれてるのが嬉しいです。
——いろんな方々に提供していただいていますよね。去年リリースした“シンガロン・シンガソン”はMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんの作詞作曲でしたし、それ以前もKEYTALKの首藤義勝さん、たむらぱんさん、レキシの池田貴史さん、大沢伸一さん、クリープハイプの尾崎世界観さん、四星球とか、すごい方々ばかりです。
真山 本当にありがたいことだと思ってます。
星名 エビ中は歌ってる楽曲が幅広いので、聴いていただければ「この曲、好き!」っていうものが、きっと見つけられると思います。
——「エビ中の音楽は刺激的で面白い」っていう自信は、みなさんの中にあるんじゃないですか?
全員 そうですねえ(笑)。
安本 アイドルフェスとかに出させていただいた時に私が一番アピールしたいのは、エビ中のいろんな曲なんです。ライブで歌ってる時も「素敵な音楽を歌わせていただけて嬉しいな」って思ってます。
真山 フェスのセットリストは「幅を見せられるように」っていうことも考えてるんですよ。どれか1曲でも気になって、エビ中に興味を持っていただけたらなと思ってます。
——ロックバンドが好きなエビ中のファンも多いですよね?
星名 はい。レキシのTシャツを着たお客さんとかもいますし。
真山 この前、クリープハイプのTシャツを着たお客さんがいました。エビ中の現場なのに、いろんなアーティストのTシャツのお客さんが来てくださってます。
小林 “お願いジーザス”(3rdアルバム『穴空』収録)という曲はフジファブリックの加藤慎一さんが作ってくださったんですけど、この前、握手会にフジファブリックさんのTシャツのお客さんもいらっしゃいましたね。私はエビ中に楽曲提供をしてくださったアーティストさんにハマりやすいんですよ。エビ中のおかげで、いい音楽をたくさん聴けてる感じが最近してます。
柏木 大森元貴さんに楽曲提供をしていただいた時も、ずっとミセスさんを聴いてたよね?
小林 うん。提供してくださったアーティストさん全員に影響され続けてます。
真山 メンバー全員、音楽の食わず嫌いがなくなりました。
安本 エビ中に楽曲提供をしてくださったアーティストさんを好きになるファンのみなさんもたくさんいます。エビ中のファンと、いろんなアーティストさんのファンがお互いに交流してる感じもあるので、みなさんの繋ぎ役的なこともできてるのかなと思います。
——「尾崎世界観のほうがかわいいから推し変する」とか言われたら、どうするんですか?
真山 「それは仕方ないな」って思っちゃうかもしれないですね(笑)。