ユアネスが紡ぐ物語はどこから来て、どこへ向かっていくのか? 前作『Ctrl+Z』と対になる新作EP『Shift』に込めた想い

ユアネスが紡ぐ物語はどこから来て、どこへ向かっていくのか? 前作『Ctrl+Z』と対になる新作EP『Shift』に込めた想い

ライブをしていくうちに自分たちの音楽の在り方というか、魅力は別のところにあるんだということに気付けました(黒川)


――まず、バンドを組んだ由縁からお訊きしたいのですが。

古閑翔平(G) もともと僕とベースの田中は、地元の熊本で高校生だった時にネットで知り合ったんです。

田中雄大(B) 地元では高校生が気軽に出られるコピバンのライブイベントが週末にあったりしたんですけど、僕はそれには縁がなくて。どちらかというと自分がベースを弾いた動画をYouTubeに少し上げたりすることを楽しんでいたんです。それを人伝いに古閑くんが見つけてくれて、コピバンに誘ってくれたのがきっかけですね。

古閑 それで、お互い高校を卒業するタイミングで専門学校に一緒に行こうっていう話になって、「バンドに誰を誘おうか?」っていう時に、まず初期のドラムを誘い、「じゃあボーカルは?」ってなって。黒川とは入学前に同じ学校に入学するっていう繋がりで、顔も知らない状態でTwitterで知り合っていたんです。それで、ある時黒川が歌っている動画が自分のタイムラインに流れてきたのを見て、すぐDMで「もし他に歌っている動画があったらすぐ送ってください」ってメッセージを送ったんです。そしたら唯一学園祭で歌っている動画が送られてきて……。

黒川侑司(Vo・G) 高校生の時のですね。ONE OK ROCKとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとかRADWIMPSを歌っているやつです。

古閑 その映像を観た時に「ああもう黒ちゃんがいい」って思ってバンドに誘って、一旦バンドの形になったという感じですね。

――その時の黒川さんの歌声の何に惹かれたんですか?

古閑 当時はそこまでがっつり上手いって訳ではなかったんですけど、一回聴いただけでいい声だなと思ったことが確信になった感じです。自分の中でやりたいバンドっていうのが、ギター/ギターボーカル/ベース/ドラムの4人編成で各自演奏の幅を広げていけたらいいっていうのと、日本人なので日本語の歌詞がわかりやすいという芯があったので、歌詞がちゃんと聞き取りやすい声質をしている黒ちゃんがいいなということで。

――黒川さんは、専門学校にボーカル専攻ではなくPA専攻で入られたとのことですが、もともとどこかで歌っていたんですか?

黒川 やってなかったですね。学園祭に出たっていうのも、ただカラオケがちょっと得意で、友達が楽しそうにやっていたから出たっていうだけだったので。誘われた時は戸惑いもあったんですけど、特に学びたいこともないまま流れで地元の山口県からひとりで福岡の専門学校に入学して不安だったので、友達がほしいっていう気持ちが強かったです。

――そして、その後ドラムの方が抜けた時に、小野さんが加入されるんですね。

小野貴寛(Dr) 僕が入ったのは1年半くらい前なんですけど。もともとメタルロックとかハードロック系の音楽がすごく好きで、でも歌もののバンドでもサポートしていたし、本当に色々聴いていました。それで、ユアネスの前任ドラムが抜けるっていう時に声を掛けてもらって、即決しました。

古閑 小野も専門学校の同級生で、ギターとベースとドラムでのアンサンブルの授業で一緒に合わせていたんです。ドラム課の中でもピカイチで上手かったのが小野だったし。あと、学内での自己紹介の時に自分が「音楽でご飯食べていきます」って言ったら、めちゃくちゃ後ろのほうで何故か小野が手を挙げて「俺もそうします!」って言ってきて(笑)。

小野 全然覚えてないんですけどね(笑)。

――小野さんが加入して現在の4人のユアネスになってから、今年は東京での初のワンマンライブも成功させたとのことですが、やっぱり地元・福岡でのライブとは違いました?

黒川 客層の幅が広いのは確実に東京でしたね。福岡はいつも来ていただいている方がやっぱり多いですし、ホーム感はあったんですけど、東京は自分たちが予想していないところからのお客さんがいたりして、そういう面では違いを感じましたね。

――サーキットイベントや夏フェスにも多く出演されたことで、その経験から得たものや気付きはありました?

黒川 音楽のスタイル的に手を上げたり踊ったりっていうノリじゃないので、夏フェスや昔対バンしてきた人たちのライブを観ると、どうしても「熱い」というか、「盛り上げなきゃいけない」みたいな気持ちが個人的にはあったんですけど、ライブをしていくうちに自分たちの音楽の在り方というか、魅力は別のところにあるんだということに気付けました。

小野 お客さんがシーンと静かに観てくれていて、最初は正直「あれ? 響いてないのかな?」って思うことはありました。でもその雰囲気から、お客さんが自分たちのライブをすごく真剣に観てくれているんだって思えるようになったので、今はすごく安心してライブできるようになりました。

田中 僕らの音楽って、CDを聴いたりMVを観たりしただけだと、優しいというか淡泊というか、そっけなくライブをするバンドだと思われがちなんですけど、実際にライブを観て「イメージが変わった」と言ってくれる方が多くて。自分たちではそうは思っていなくても、ライブだと意外と熱が伝わっているんだなと思えました。「僕らにも熱あったんや!」みたいな(笑)。

全員 (笑)。

田中 意図して出している部分ではなかったので、観てもらうからには頑張らなきゃ!っていう気持ちが、相手からしたら熱量として受け取ってもらえていたんだなって思えて嬉しかったですね。


作ってもらったメロディをめっちゃかっこよく歌うっていう、すごくシンプルなことしか考えていないです(黒川)


――ここからは新作についてのお話を伺いたいと思います。楽曲はもちろん、ジャケットデザインも前作『Ctrl+Z』との密接な関係性を持った作品ですが、このシナリオは前作をリリースした段階から出来上がっていたんでしょうか?

古閑 そうですね。パソコンでこの「Ctrl+Z」キーを自分がよく使うので、それを出した時点で、もし次の作品を作るなら「Shift」っていうタイトルにして2枚でひとつにしたいなっていう構想はありましたね。「Ctrl+Z」は振り返って後ろを向くんですけど、そこで「Shift」を押してまた前を向くっていうイメージを込めて付けています。

――同じく前作との比較になるんですけど、今作は前作に比べて変拍子が減ったというか、ほぼないですよね。その辺りは意図したものだったんですか?

古閑 2枚でひとつのフルアルバムとして聴いた時に、『Ctrl+Z』にはないサウンドを『Shift』に入れていこうとは思っていました。1枚目がサウンド的に結構テクニカルに攻めていたので、逆にもう1枚はもっと音数を減らしたシンプルなアプローチをして、2枚で1枚のフルアルバムとして聴いた時にバランスがいいように考えました。

――今作を作る上で、サウンドと歌詞の融合をする際に大事にしたことはありますか?

古閑 先行して付ける音と歌詞は絶対的に揺るがないポジションなので、あとはバンドのアレンジをどうアプローチしていくかっていうのと、ボーカルを一番に目立たせるっていうコンセプトを維持していくことですね。それらをしつつ、ギター/ベース/ドラムの一番濃い色を出せるように持ち上げるところは気を遣ったポイントではあります。

――今作を聴いても、黒川さんの歌声の良さがより引き立つバンドサウンドになっているように思います。黒川さんはボーカルとして意識していることはありますか?

黒川 うーん……僕、正直、歌についてものすごく真剣に考えたことってないんですよね。考えすぎればすぎるほど悪い方向にいっちゃう癖があって……。

古閑・田中・小野 (頷く)。

――みなさんめっちゃ頷いていますね(笑)。

田中 まったくもってその通り。

黒川 だから、作ってもらったメロディをめっちゃかっこよく歌うっていう、すごくシンプルなことしか考えていないです。楽曲のコンセプトに沿ったり、どれだけ自分の個性を出していくかっていうのは、ライブで歌っていくうちに気付いていくことではあるんですけど、普段はあえて考えないようにしています。

古閑 黒川は何も考えずに楽しそうに歌うほうがいい歌を歌うんです。逆にピッチをバチっと合わせようとして歌っている時はすごくわかるんですよね。感情が薄れてしまって、ピッチに合わせにいっちゃうので。

――じゃあメンバーからは自然体で歌っている時が一番いいというお墨付きをもらっているんですね。

黒川 そうなんですよ。だから褒められたら嬉しいし、褒められんかったら傷付くみたいな……。

全員 (笑)。

黒川 でも、自分の性格的にもそれくらいがいいんかなって思ってます。

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