今しか書けないことだし、過ぎたら絶対に書けないようなことを、書こうとしている
──『未成年』という作品タイトルには、若い世代としてのこだわりが込められていたと思うんです。20歳を迎えて、新しい意識を持たなきゃいけないという気持ちがあったと思うんですね。
「そうですね。20代だと他の人と同じ土俵で、10代なのにすごい、がなくなっちゃうから。でも、一生尖っていたいです。ずっと何かに反発していたいですね」
──そこに立ち向かう武器として、ずっと音楽があったのかな。今まで、音楽を作ることが、慰めや癒しになったところはありますか。
「汚い話になるんですけど、膿を出す感じ。溜まっていたものが、曲を作ることによって発散されるというか、言いたかったことをそこでやっと言える、という感じですね」
──移籍して、9月に配信リリースされた“Doctor”はまさに溜まっていたものを発散する曲で、世の中の平均化された価値観に対して抵抗する曲だったと思うんですけど。
「今2018年で、その前にも何万年も人類の歴史があって、そりゃあ同じ物が増えるじゃないですか。私は仕方がないことだと思うんですよ。で、インターネットが普及してから、みんなの怒る沸点が低くなっている気がするんです。それが若い人たちだと、余計心配になるんですね。そんなに怒ってたらブサイクになるよ、って。直接伝えられない人が多いし、撮影OKなライブだとスマホの画面越しに見てるし。せっかく来たんだから体感して欲しいし、一番いい画質なんて、絶対自分の目じゃないですか。だから、沸点が低くなっていることをみんなが怖がっていて、流行っているもの、長いものに巻かれようとしている人たちが、特に日本には多いと思います。ちょっとでも違っている人がいると、キモいとか、頭おかしいとか言われるじゃないですか。歌詞の中でも、《嘘ばっかのTwitter/みんな自称ヒーロー/嫌気がさすよ日替わり悪役/今夜の餌食はお前だ》って言っているんですけど。今は、一般の人でもそのターゲットに成り得るんですよ。身内でちょっとおもしろい動画を上げようと思ったら、何万リツイートもされたり」
──顔の見えないところで言いたいことを言う人っていっぱいいるけど、ちゃんみなさんは人前に立って言いたいことを言うでしょ。それはなぜ?
「もともとリーダー気質だと思うんですけど、私の人生のスタート地点、性格が覚醒されたのは、たぶんいじめに遭ったことが原因だと思います。当時は日本語が話せなかったり、理由は分からないですけど。そのときに、まず自分がされて嫌だなって思うじゃないですか。その先に、自分がして嫌だなって気づいて、優しくされないことより、優しくできないことのほうがしんどいなあって、思うようになりましたね」
──違っていることを理由に、人が人を攻撃する。ちゃんみなさんは、そこでどう対抗したらいいかを考えたんだろうね。“Doctor”はまさにそういう曲だと思う。
「うん、そうですね。ちゃんみなは、そこから始まっていると思います」
──なるほど。そして新曲“PAIN IS BEAUTY”は、私はこういう理由で孤独だった、という過去を振り返って丹念に説明した曲で、“Doctor”と繋がってとても大きな物語が描かれていると思うんですが、今、これを伝えたいと思ったのはなぜですか。
「“Doctor”は、みんな一緒でつまんないなあ、嫌われるのが怖いんだね、みたいな曲で、“PAIN IS BEAUTY”は、人と違ってもいいじゃん、コンプレックスを愛そうよ、という曲なんですけど、もともと20歳になったタイミングで、節目としてこういう曲を出したいと思っていて。座右の銘的なものが“PAIN IS BEAUTY”だったんですね。私が身をもって体験した、本当にそうなんだよ、というテーマだったし。1ヴァース目はどちらかというと昔の自分や今の自分に言っていることで、2ヴァース目になって《戦ってみせてよbaby/疲れたらここにおいで/そう大切な人達にそんな歌を歌っていたい》って言っているのは、ファンの人たちがいるからこそ歌えることだと思います。曲を作るにあたっていつも大事にしていることは、今しか書けないことだし、過ぎたら絶対に書けないようなことを、書こうとしているので、ファンの子たちに語りかけるのは、今だったのかなって。でもそれは、自分に言っていることでもあります」
──まさに、今おっしゃっていた歌詞の部分なんですけど、もう、ちゃんみなさんがドクターになってるんですよ。
「あははは、はい」
そのときやりたいことを、真剣にやればいいのかなって思います。音楽は音楽なんで。ロックなこともやってみたいです
──誰かに助けを求めていたのが“Doctor”なら、それを自分で引き受けているのが“PAIN IS BEAUTY”で。そういう覚悟の歌だと思うんですね。
「私、本当に愛されていて。ファンの子たちや一緒に働いてくれている人たちに、どう返したらいいんだろうって思ったら、私なりの覚悟をして……覚悟ってほどでもないんですけど、私が存在していて嬉しいと思ってくれるんだったらそれが嬉しいし、それを本心で思っているんだなって気づいて、そういう歌詞が生まれたんだと思います。シンプルなラップとか、エモい曲調というのは、私はこういう音楽が好きなんだ、と思ったきっかけの曲調でもあるんですよ。いわゆる原点みたいなもので。だから、《疲れたらここにおいで》っていうのは、自分に向けて言っていることでもあるんです。疲れたらこの曲を聴いて、原点が大事だってことを、いつかの自分に気づいて欲しい。そういう、ファイトソング的な曲でもあるんです」
──やっぱり歌がね、すごいなと思います。アルバム『CHOCOLATE』を聴いたときにも、あ、シンガーとして本当にすごいんだな、って思いましたけど。
「“PAIN IS BEAUTY”のサビのメロディが、超高いじゃないですか。死ぬかと思いました。自分で、なんでこんなメロディ作ったんだろうと思いながら、歌入れしていたんですけど。次の日から、花粉症とか風邪もあって、声が出なくなったんですよ。ワンマン前に本当にヤバくて」
──それほどのメロディを書いて、歌わないと気が済まない、というところはありますか。
「ありますね。できないとか、ないから! みたいに思って(笑)」
──じゃあ、今後のちゃんみなさんの表現スタイルとしては、どうでしょう。歌に力を入れていきたいんですか。
「うーん、そこは縛られなくていいのかなと思っていて。そのときやりたいことを、真剣にやればいいのかなって思います。音楽は音楽なんで。ロックなこともやってみたいですし。私が超インスピレーションを受けたアーティストが、アヴリル・ラヴィーンなんですけど、彼女がずっと若い感じとか、ずっと自分を貫いている感じが好きだな、と思って。そういう曲をやってみたいですし、クラシックとかも作ってみたいです。やりたいことは一杯あるんですが、タイミングなのかなと思って。じゃあ最終的にこれをやりたいから、今はこれをやるべきだなとか、カードゲームをしている感じです、今」