ヒトリエ、「孤独」との闘いの先に結実した「愛」のかたち――4thフルアルバム『HOWLS』全員インタビュー

ヒトリエ、「孤独」との闘いの先に結実した「愛」のかたち――4thフルアルバム『HOWLS』全員インタビュー - photo by 西槇太一photo by 西槇太一

wowakaという自分の母親が初音ミクなら、父親はナンバーガールだと思ってる


――音楽的にも、“ポラリス”“伽藍如何前零番地”“コヨーテエンゴースト”“SLEEPWALK”ってバリエーションの振り幅すごいですよね。

wowaka あっち行ったりこっち行ったりしますね(笑)。でも、自分の中で「何をやっても自分になるじゃん」、「何をやってもヒトリエになるじゃん」、「何をやってもいいじゃん」っていう感覚がたぶん、音楽的なところで言うと、「いろいろやってみようよ」だったり、「極端なことでもやってみようよ」、「ネジ外してみようよ」みたいな……そういうやりとりが、今回のアルバムでは多かったですね。幅もすごく作れたし、ミュージシャン的なところで言っても「もっと極端にしようぜ、もっと遊ぼうぜ」っていうやりとりは多かった気がします。

――ナンバーガール魂を刺激しそうな“殺風景”っていう曲もありますね。

シノダ なんでこの曲名にしたの?って、びっくりした(笑)。

wowaka しっくり来たんですよ。もちろん、俺はナンバーガールが世界一好きだという自信もあるし(笑)。wowakaという自分の母親は、俺は初音ミクだと思ってるんですけど、父親はナンバーガールだと思ってるんです。そういう感覚です(笑)。たぶん音楽を始めた頃の自分だったら、「“殺風景”なんていうタイトルを自分の曲につけた日には、もう生きていけない!」みたいな感覚もあったと思うんですけど――。

シノダ・イガラシ・ゆーまお はははは!

wowaka 何をやっても俺は俺だし。もちろん、そこには「ナンバーガールで育ってきた自分」もいるから、ああ大丈夫だ、と思ってつけたタイトルでもありますね。


僕がひとりの人間として生きていく中で、すげえ個人的かつ生々しいものを曲にした(wowaka)


――“青”のシューゲイザーバラードみたいな音像も、ヒトリエ的には新しいですよね。

wowaka この曲はもう、そうしようって言って作ってたよね。僕とシノダはギターの話をよくするんですけど、もうギターをめっちゃ歪ませてみよう、めっちゃ大きな音を出してみよう!って。

シノダ 汚ねえ音だよね(笑)。グランジっていうのが一個テーマにあった気がする。

wowaka 「そういう汚した音に、美しいメロディを乗っけたらいいんじゃない?」って。

シノダ ヒトリエの曲でアンプのゲインが一番高いんじゃない? バラードなのに(笑)。

wowaka マーシャルのアンプをフルテンにして、そこから音作りを始めたんですよ。もちろん、そこから微調整をするんですけど……聴いたことないぐらい音がでかくて(笑)。レコーディングブースの、重めの扉が3枚ぐらいあるんですけど、3枚経ても生の音が伝わってくるんですよ。

シノダ 人を殺せるぐらいのレベルだよね。ヤバい音出してたから(笑)。

wowaka でも、それをマイクで拾って録音したら……まあ、それがすごく胸に来る音で。「ああ、俺はこういうことをずっとやりたかったんだなあ」って思って弾いてたら、その日の終わりにアンプがぶっ壊れるっていう(笑)。

シノダ あれ、出しちゃいけない音量だったんですよ(笑)。

wowaka やっぱりみんな、音楽とか楽器が大好きですね、うちのバンドは(笑)。「何言ってんだ、当然だろ」みたいな話ですけど、めっちゃ音楽が好きな4人組だと思うんですよね。で、それぞれがそれぞれにやってみたいこと、試したいこと、探究心と好奇心がすごくあって。それがみんな違う方向を向いてたりもするんですよ、それぞれのタイミングで。でも、4人集まって、それが噛み合って曲になった時に、ドン!と爆発する、みたいな――そういうのが俺はいいなあと思って。それって世界みたいだなあと思って(笑)。そういうことを思ってもいるので。音楽が大好きで、コミュニケーションが苦手で、でも好奇心があって、試そうとする、っていうところが……今までデビューしてから5年やってきて、毎回成長して、できることが増えてきたと思うんですけど、今回それが一番できたんじゃないかなって。

イガラシ “青”ってwowakaギターから始まるんですけど、3小節目に差し掛かるぐらいのところで、2音ぐらいハーモニクスが鳴ってて。それってたぶん偶発的なものなんですけど、もう奇跡的にいい音で――すべての情景を思い起こさせるような、なかなか聴けないハーモニクスが入ってて。センチメンタルさと思い出を煮詰めたような音がします。「頼むからこのテイクを残してくれ!」って。

wowaka なんなら俺、替えようとしてたもんね。「もっといいの弾きたい!」って。

シノダ 俺のリードギターのテイクは替えられたけど(笑)。

――そういう、バンドならではの生々しさが凝縮されてますよね、このサウンドには。

wowaka “青”は、曲の内容が一番生々しいというか……言ってしまえば、僕が生まれて初めて書いた失恋の曲なんです。僕がひとりの人間として生きていく中で、すげえ個人的かつ生々しいものを曲にして、バンドで演奏したら、さっきのハーモニクスの話とか、音作りの話もそうですけど、「こういうことだよ」って――俺、何も言ってないな(笑)。

――でも、「こういうこと」ですよね、たしかに。

wowaka もう命みたいな、人間みたいな。そういうものが音楽になる、っていうのは、すごい経験をしましたね。

――フレーズとか言葉とかに置き換えられない、ニュアンスとかも含めたところに「人」が鳴ってる、っていうことですね。

wowaka ああ、そうです。それです!(笑)。だから俺はバンドが好きなんだ。人が鳴ってます。

――ヒトリエが「人を鳴らす場所」になった、っていうのがよくわかるアルバムだと思います。

wowaka ありがとうございます。嬉しい。俺はそういう姿がいいなあって思うし、なんなら人類全員そういう人だと思ってるし。やっぱりみんな、どういう方法でも命を燃やしながら、自分を鳴らそうとしながら生きてるわけじゃないですか。それをやるうえで、ロックバンドっていうのは一番すげえな、って僕は感動してきたので。そういうことをやっていきたいですね。


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