デジタルシングル“FXXKER”でのデビューから約2年。強烈なラップとポップでソウルフルな歌声を自在に操り、唯一無比の存在として活動を続けてきたちゃんみな。昨年はレーベルを移籍し、“Doctor”の攻撃的なラップで度肝を抜き、20歳の誕生日を迎えた後には、さらに自身の傷や痛みをストレートに描き出すような衝撃的な“PAIN IS BEAUTY”をリリース。それから約3ヶ月。ちゃんみなの最新シングル『I’m a Pop』が届いた。表題曲は前作にも増して抑えようのない苛立ちや怒りに満ちた、強力なヒップホップチューンである。簡単に「ジャンル」に当てはめられることへの違和感を、彼女は強い言葉で歌わずにはいられない。その衝動はどこからやってくるのか。ダークでヘヴィなこの問題作について、ちゃんみな自身にじっくり語ってもらう。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=伊藤元気(symphonic)
私はポップである、私はロックである、私はヒップホップである──そのどれでもないんじゃなくて、「全部私だ」っていうことを一番強く思っていた
──CD作品としてシングルをリリースするのは今回が初めてなんですね。強力に突きつけられるような1曲ができあがりました。“I’m a Pop”はどうやって制作していったんですか?
「前作の“PAIN IS BEAUTY”を出して、私の中でそこで『ちゃんみな第一章』が終わったみたいなイメージがあったんです。だから今回は第二章のスタートだなっていう気持ちがあったので、一発目、先陣を切れるような曲がいいなと、ずっとテーマにしたかった『ジャンルレス』のことを歌いました。韓国語と日本語と英語をごちゃまぜにした、リスナーの人からしたらやさしくない曲だと思うけど(笑)。でも、先にトラックがあって、そこにメロディを入れていったんですけど、最初、歌詞を入れる前は『これ無理じゃね?』って思ってたんですよ。この曲たぶん、怖すぎてきついなって。だから何をテーマに書いていいかわからなかったんですけど、その『ジャンルレス』のことを思いついてからは、がっちりはまってよかったです」
──トラックがとてもクールでダークなので、自ずと強いメッセージのリリックが出てくるのかなとは思っていたんですけど、これまで以上にストレートに苛立ちがシンプルに伝わる楽曲で。
「このことについてはずっとたまってたんでしょうね、書きたいことがありすぎて。その中で何が一番伝えたいことなのかって考えた時に、この内容に行き着いたというか。日本も韓国も関係ないし、日本語も韓国語も関係ない。私はポップである、私はロックである、私はヒップホップである──そのどれでもないんじゃなくて、『全部私だ』っていうことを一番強く思っていたので、それがうまく伝えられたんじゃないかなと思います」
──今回の楽曲のタイトルに“I’m a Pop”と名付けた真意を、もう少し詳しく訊きたいんですが。
「私のことをヒップホップミュージシャンとして見ている人が多いと思うんですけど、ちゃんみなを聴いて『ちゃんみなはヒップホップじゃない』とか、『ちゃんみなはポップだ』とか言われることもあって。なぜだかヒップホップの人たちの中には、ポップスを悪いものだとしている人がいて、特にヒップホップとポップって仲が悪いもののように捉えられがちで。だから私はそういう人からしたら『ヒップホップじゃない』ってことになるし、ポップな人からしたら『いやヒップホップでしょ』って。でもヒップホップの人には『にわかだ』って言われたりもして、そんなこと言われても『は?』って感じで。別にそんなのよくない?って思うんですよ。私はポップだろうがヒップホップだろうが、音楽がやりたいわけだから。ロックをやってる人たちからお声がけいただいて一緒に曲を作ったりもしてるし、固定概念にとらわれないものをやっていきたいと思っています。だから今作はあえて、サウンドがヒップホップだから、タイトルには一番仲が悪いと思われてる『ポップ』を選びました」
──聴いていて、すごく「ロック」を感じたんですよね。サウンドやジャンルがロックというのではなくて、ちゃんみなさんが伝えようとしているメッセージ自体が非常にロックだと感じたのと、ダルな歌い回しがすごく尖っていたので。
「ああ、でもそれも自然とですね。まだテーマもなにも決まってないときに、歌入れを始めたので、自然とファーストインスピレーションで出てきたものに忠実にやりました。直感を大切にしているので、そこからはほぼほぼ変えずに歌詞を仕上げて。曲ができた時はすごいヒップホップだな、だからヒップホップなことを書かないとなって思ってたんですけど、そこをあえて、こういうテーマにするっていうのを思いついたので、こんな感じになりました」
サビがなかなか思いつかなかったんです。今回みたいな感じは今までやったことなかったんですよ。サビがわかりづらいっていうか、怖いっていうか
──Ryosuke“Dr.R”Sakaiさんとのトラック制作は、今回はどんなふうに進んでいったんですか?
「ほんと日常的にいろんな曲を作ってるんですけど、そのときは確か『尖ってるものがやりたい』って伝えて、それで一緒にイントロを作ってるときに、『ヤバイ、これ絶対いける』って思ったんですよね。で、できあがったところから、私がブースに入って歌入れして、でもサビがなかなか思いつかなかったんです。今回みたいな感じは今までやったことなかったんですよ。サビがわかりづらいっていうか、怖いっていうか。どんどんそういうものになっていったときに、Sakaiさんは『ヤバイじゃんこれ!』ってなってたけど、私は『これ大丈夫か』って思ってたんです」
──ちょっと見えないというか?
「そう。歌詞が全然思いつかないし、これはどういうトピックにしたらいいんだろうって悩んでしまって。その日は一旦帰ったんですよね。次の日もレコーディングがあって別の曲を仕上げなければいけなかったんですけど、その日に録った音が届いて、それを聴いたらパッと思いつくものがあって。ひらめいてすぐに歌詞を書いたんですよ、それこそ1時間くらいでできて。そういうふうに早く書けるときって、うまくいく曲なんです。“Doctor”や“PAIN IS BEAUTY”、あと“CHOCOLATE”とかもそうだったから。代表曲になるような曲はみんなそうで、だからこの曲、なんとなくいける気がするなと思えるようになって。で、Sakaiさんと『やっぱりね』って」
──Sakaiさんの中では「すごいものになる」って、先にイメージが描けてたのかもしれないですね。
「うん。だからさすがだなって思いました」
──結果、ものすごくパンチの効いた楽曲になりました。さっき言ってたみたいにポップとヒップホップの関係性の中で言えば、2ndアルバム『CHOCOLATE』のときは、ちゃんみなさんはどちらかというとポップ志向で制作してたのかなと思うんです。シンガーとしてのバラエティの豊かさをすごく感じましたし。
「自分がやりたいものって常にほんといろいろあるんですけど、それをいつどのタイミングで出すかっていうのは、すごく慎重に考えているんです。『CHOCOLATE』のときは、なんかこう、けっこう悲しかった思い出があって、それをあえてハッピーに処理をしたい、昇華したいと思って、そういうふうに作ったんですよね。その中にも、“TO HATERS”とか、すごくヒップホップなチューンもあるんですけど、あまりフィーチャーしてなかったんですよ。で、そのあとにレコード会社を移籍して出したのが“Doctor”で、そこまでヒップホップの強い曲っていうのは出してなかったんです。でも逆に、私が移籍をしてまた『CHOCOLATE』みたいな作品を一発目で出したら、『やっぱりちゃんみなはその路線でいくんだ』って思われてしまう」
──そっか。仕切り直しのタイミングだから、その印象はより強くなってしまうだろうと。
「そうですそうです。仕切り直しのときに、じゃあ何が一番必要なんだろうって思ったら、自分が一番面白い、かっこいいって思えるものにしようって考えたし、まわりのスタッフにも『よしこれでいこう!』って心から思ってもらえるものを作りたいって思ったんですけど、みんながメイクセンスするまでに時間がかかってしまって、まあ大変でした(笑)。でもそれもあって“Doctor”はすごくうまくできたと思います。そう、だから私も最初、リスナーの人たちにはすごくびっくりされるかなって思ったんですよ。『どうしたの?』って言われるかもなって思ったんですけど、意外と私のライブに来てくれてる子はびっくりしてなくて、『そうだよね』とか『めっちゃいい』って言ってくれて、なんか、ありがたいなあ、よく知っててくれてるんだなあって感動しました」