FIVE NEW OLD、何事にも縛られない自由なポップサウンド、そのルーツに迫ったボーカル・HIROSHIパーソナルインタビュー!

FIVE NEW OLD、何事にも縛られない自由なポップサウンド、そのルーツに迫ったボーカル・HIROSHIパーソナルインタビュー!

日本人の音楽でも、比較的古い……ザ・キングトーンズの“グッド・ナイト・ベイビー”とか(笑)。だから、カラオケに行って日本語で歌うとなると、尾崎紀世彦さんとかになっちゃうんですよ


――紛れもなく日本発信の音楽ではあるんですけど、楽曲だけでなくアレンジやサウンドデザイン、ミックスまで含めて、「世界市民としての音楽」みたいなフェーズに入りつつあるような感覚を、今回の3rd EP『WHAT’S GONNA BE?』からは感じたんですが?

「やっぱり、僕たちもいわゆる欧米の音楽にすごく大きな影響を受けて、それを自分たちの形で国内でやっているわけですけども。ストリーミングとかもだいぶ普及してきたし、音楽のボーダーラインってどんどんなくなってきていて。アメリカの大統領がトランプになって、排他的というかナショナリズムが台頭してくると――アメリカの人たちの、自国に対しての自信が少し揺らいでくるというか。あと、ナショナリズムに対する反動もあって、文化の部分とか音楽的な面に関して意識がより外向きになっているような気がして。BTSとか88risingの人たちが向こうで人気だったり、KOHHくんがすごいことになってたり、っていうアジアの音楽とか。あとはカミラ・カベロとか、中南米の音楽、レゲトンのリズムが再認識されて世界に広まってることとか……その文化圏が持ってる音楽の特徴とか、土着的なリズム感とかを、誇りを持って世界に発信していけるタイミングなのかな、っていうのは感じています。でもまあ、僕らとしては、これまでと変わらず、やることをやって――ただ、それがもっといろんな人に届くチャンスは増えているのかなあっていう感じですね」

――今や「世界に発信する」ことにボーダーラインを感じる必要もないという。その実感というか手応えは、確実にこの作品にも反映されてますよね。

「そうですね。やればやるほど、国内だからどうだ、国外だからどうだ、っていうことは関係なくなってきたというか。それが関係なくなっていけばいくほど、逆にある種、『世界市民である日本人』としてどんな音楽を届けられるのか?っていうところも意識するようになってくるので。それは面白いですね」

――ここで一度、改めてHIROSHIさんのルーツについて伺いたいんですけども。それこそこの表紙の(『ROCKIN’ON JAPAN』3月号、ONE OK ROCK・Taka表紙号)Takaさんも、そこのボーダーラインを越えようとトライしている人ですけど、彼は最近のライブのMCで「ONE OK ROCKって最初のほうはね、がっつり歌謡曲なんですよ。すごくJ-POPで」という話をされていて――ルーツとして日本の曲を聴いて育った感覚が作る楽曲にも出ていた、という文脈の話だったんですけど。そういう意味でHIROSHIさんのルーツとして、歌謡曲であったり日本の音楽からの影響はなかったんですか?

「環境的にはずいぶん少なかったと思いますね。なかったわけではないですけど、同世代とリンクするような部分が極端に少なくて、学校の校内放送で耳にする程度だったんですよ。日本人の音楽でも、比較的古い……ザ・キングトーンズの“グッド・ナイト・ベイビー”とか(笑)。だから、カラオケに行って日本語で歌うとなると、尾崎紀世彦さんとかになっちゃうんですよ。あとは(山下)達郎さんとか、竹内まりやさんとか――その辺はうちの親も聴いていたので。ザ・キングトーンズとか、あとグループサウンズの人たちとかも、アメリカから入ってきた文化を自分たちで消化したっていうのが根底にあると思うので。どっちかって言うと、国内でもそういう姿勢で音楽をやっていた人には、どこかシンパシーを感じるところはありますね」

――やっぱり、HIROSHIさんを音楽的に形成してきたのは洋楽の影響っていうことですよね。

「洋楽が多い気がしますね。あとは、ゲームから教えてもらった音楽だったりとか。スケートボードが好きで、スケートボードのゲームをやってたんですけど。そこ出てくるプロのスケーターが、ゲームの中で流れるBGMを自分たちでチョイスしていて。ヒップホップもあればAC/DCもあり、ゴールドフィンガーみたいなパンクもあり……そういうところから音楽の情報を得ているところもありましたね」

好き好んで選んだのはやっぱりロックで。でも、もっと立ち返ると、クラシックなんですけど――僕は一番最初に好きになったのはモーツァルトだった


――以前インタビューさせていただいた時に、「スケーターカルチャーの中でバンドをやるなら」ということで当初ポップパンクを始めたとおっしゃっていて。いろんな素養を持った上でポップパンクを後天的に「選んだ」という話が印象に残っているんですけども。

「そういう意味では、僕がどのスケーターを好きになったか、みたいなところで決まったところはある気がします。チャド・マスカっていうスケーターがいて――スープラっていうスニーカーのブランドをやってちょっと前に流行ったんですけど――その人は白人だけど、結構ヒップホップの人だったので。僕がその人をすごく好きになってたら、僕は今ラップしてたと思うし(笑)」

――R&Bとかファンクとか、ブラックミュージックの素養は、蓄積としてあったんですか?

「そこが僕は不思議というか、環境音みたいな感じだったんですよね。親が流しているのをドライブ中に聴いているとか……でも、その中で『スティーヴィー・ワンダーいいな』とか『マーヴィン・ゲイのこの感覚が』とかはあったんですけど。ブラックミュージックに関しては、僕の中では自然に体の中にあったもの、っていう感じだったんですよね。好き好んで選んだのはやっぱりロックで。でも、もっと立ち返ると、クラシックなんですけど――僕は一番最初に好きになったのはモーツァルトだったので」

――え、それは何歳ぐらいの頃ですか?

「8歳ぐらいですね。当時プレステがすごく好きで、やりすぎてよくディスクを隠されたりもしてて(笑)。『とにかくゲームと同じ行為がしたい』っていうことで、擬似的に家にあったCDをプレステに入れて再生してたんです。その時に『めっちゃいいじゃん、モーツァルト』って気づいたのが、自分で能動的に音楽を聴くスタートでした(笑)。でも、『知りたい欲』はあったので。シューベルトとか、ヴィヴァルディとかも聴くようになって。母親に『もっと何かない?』って訊いたら、『クラシックをジャズでやってるトリオがいるから』ってオイゲン・キケロのトリオを聴かせてもらって『ジャズ面白い!』ってなって。小学6年生でロックをラジオで聴く前に、クラシックとジャズを聴いてたっていう……めっちゃませてますね(笑)」

――同級生との共通の話題とか「こういうのが流行ってるから」とかいう観点ではなく音楽を聴くっていう習慣が、その時点でできてたんでしょうね。

「そうですね。『何が流行ってるか』っていう情報の取り方が、いい意味でも悪い意味でも下手くそだったんですよ。自分も天邪鬼で、『流行ってるものは嫌だ』みたいなところもあったから、どうしても『俺はこれがいいぜ』っていうものを選びがちだったというか。ひとりっ子だったし、同世代の子の親御さんと比べると、うちの親は年上で――今75歳ぐらいなので、受け継いでいるものもそっちの時代のものなんですよね(笑)」

――そんなHIROSHI少年に、ロックの衝撃を与えてくれたアーティストは誰でした?

「ふたつ大きな作品があって、ひとつはベタに、ラジオで聴いたニルヴァーナの“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”ですね。で、その一個手前は、『鬼武者2』っていうゲームの主題歌で、布袋寅泰さんが“RUSSIAN ROULETTE”っていう曲を作られていて、『鬼武者2』の初回限定版にはそのミュージックビデオが映像特典としてついてきたんですよ。それを観て『カッコいいな』と思ったのがきっかけですね。その後、めちゃくちゃ好きになったのはリンキン・パークで、『メテオラ』から入って『ハイブリッド・セオリー』を聴いたりとか……よほど好きにならない限りは、自分で選んで『いい』と思った作品だけを聴くっていうことが多いですね。たとえば、僕は(ザ・)ストロークスを聴くのはすごく遅かったんですけど、『アングルズ』っていう、メンバー本人たちも『これはクソだ』みたいなことを言ってるアルバムから入ったんですけど(笑)、僕はそこから入ったし、それがいいと思ったんで」

――世間的な評価はともかく、っていう価値観ははっきりしてますよね。

「そこはうまい具合に情報が遮断されていたので、よかったなあって。何が好きかは自分で決められたので。今、僕らがリスナーとして新しく出会っていくアーティストとかのほうが難しいなと思うんですよ。もう常に『おすすめ』がランクアップされてるわけじゃないですか。それを聴いて完結しちゃうのは退屈だなあと思うので……一概に否定はできないんですけど、本来もっとバラバラでいいはずだなっていう気がします。あとは、キュレーターさんがどこまで自分で『いい』と思った曲をプレイリストに入れてくれるか、っていうのも大事だなと思うし。僕たちも、リード曲以外の曲でも『いいな』と思ったものをプレイリストに入れてくれていると、それはそれですごく嬉しいことだし。僕たち自身も、そういう音楽を届けないといけないと思うんですけど」

次のページちょっとずつ考えてみることで、変わるものってあるんじゃないかな?と。それを常に届けたい
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