4人組ヒップホップグループJABBA DA FOOTBALL CLUBが、シングル『新世界』でメジャーデビューする。タイトル曲は、ドヴォルザーク交響曲第9番“新世界より”を大胆にサンプリング。誰もが知っているあの壮大なメロディが響き渡る中、メンバーたちの心情が生々しく描かれている。4人各々の個性豊かな表現スタイルを存分に体感できる曲だ。幅広い音楽リスナーを魅了し得るポピュラリティにも満ちているこのグループは、どのような想いを抱きながら活動しているのだろうか? メンバーたちに語ってもらった。
インタビュー=田中大
僕らにとって一番大きいのは「嘘をつかない」ってことなんです。そういう前提だけは守ってるっていう感じです(NOLOV)
――結成は2014年ですね。
NOLOV はい。BAOBABがもともとDJをやってて、バンドマンでもあったんですけど、楽曲制作ができたんですよ。彼が2013年頃にEPを出すことになって、「俺もラップしたいんですけど」って言ったら「フィーチャリングじゃなくて、グループやるか?」ってことになったのが始まりです。
BAOBAB MC 僕はもともとギターをメインにやってて、打ち込みで曲も作ってたので、いろいろやってみたかったんです。
――みなさんは、ヒップホップがJ-POPに浸透した頃に子供時代を送った世代ですよね?
そういう中で育ったからなのか、ラップを自然に自分たちの表現としているのを、曲を聴くとすごく感じます。
ASHTRAY ラップを根づかせてくれた人たちを見て育ったというのは、たしかにあるんでしょうね。そういう上の世代のみなさんのおかげで僕らも楽しくやれてるんだと思います。
ROVIN やっぱり「俺が楽しくやれてる」っていうのが一番なんです。それがJABBA DA FOOTBALL CLUBの魅力でもあるのかなって思ってます。僕ももともと十代の頃からバンドでラップをしてたんですよ。レッチリのコピーから始めたんですけど。だから音楽に興味を持った段階でラップをしてたってことですね。
ASHTRAY 僕は上の世代のグループを聴いて、「マイクリレーってかっこいいな」って思ってましたね。KICK THE CAN CREWの“マルシェ”とか、まさにそうでしたけど。
――JABBA DA FOOTBALL CLUBの佇まいは、00年代初頭辺りにメジャーデビューしてヒップホップを幅広い層に浸透させたグループと通ずるものがありますよね。みなさんもハードコアな雰囲気ではないわけですし。
ASHTRAY 僕らはハードコアなこととかやろうとしてもできないと思うんですよ。怖い経験はしてないんで。
BAOBAB MC この4人は「普通の人たち」っていう感じなんだと思います。
NOLOV 僕らにとって一番大きいのは「嘘をつかない」ってことなんです。例えば彼(ASHTRAY)は、韻にこだわってるけど、僕はこだわってない。そういうそれぞれのものはあるんですけど、「絶対に嘘はつかないでね。フィクションの話はやめてくれ」っていうのは、この4人の中にはあって。そういう前提だけは守ってるっていう感じです。
――この先どのような曲を作っていったとしても、それが変わらないJABBA DA FOOTBALL CLUBの姿?
NOLOV はい。“新世界”もそういうものになってると思います。新しい世界に飛び込んで行くっていうのは不安もあるわけですけど、そこに対して僕たちは「大丈夫だよ」とは言えなかったんです。例えば僕たちが既に大きい結果を出してれば、「大丈夫だぜ!」って言うことに重みがあるけど、僕たちはそうではないじゃないですか。だから“新世界”は、「どうなるか見ててくれよ」っていう曲なんです。こういう正直さは、聴いてくれる人とリンクもする普遍的なことでもあるんじゃないかなと思ってます。自分を大きく見せようとしたり、逆に謙遜したり、誰かに合わせたりすることはしないようにしてますね。
――そういう姿勢は、JABBA DA FOOTBALL CLUBを始めた時からありました?
NOLOV やっていく内に思うようになったことでした。やっていく内に「音楽って思ってた以上に人に伝わる」って感じたんです。だから「こういうことだったんだな。自分らは、こうやってやるしかない」ってなりました。
――お客さんに気づかせてもらったっていうことですね。
NOLOV そうですね。ライブって、そこに来る時間とお金も貰ってますけど、つまり、みんなの人生を使ってもらってるってことじゃないですか。それなのに僕らが最悪なことをしたら最悪。そう思うことの連続です。
ほんと音楽って、本人次第でできるんですよ。何かに頼らなくても、やっちゃえばできることですから(NOLOV)
――メジャーデビューに関しては、お客さんはどのような反応をしていますか?
NOLOV お客さんも、喜んでくれてます。「初めてメジャーデビューの発表の現場に立ち会った」って言ってくれた人もいて。
――地元の友だちとかも喜んでくれているんじゃないですか?
ROVIN 僕の地元は、「まじ? まあ、ここからじゃない」っていう感じで、特にフレッシュな反応はなかったですけどね(笑)。でも、そういうところが、いいやつらなんです。
NOLOV 僕は出身が島根なんですけど、こういう夢には向かいづらいところで育ったんですよ。でも、「田舎から出てきて、スタートが遅くてもメジャー行けちゃったぜ」って僕は思ってます。そういうことが世界にはあり得るっていうのは、誰かの希望にもなることができるのかもしれないので、やっぱ、気合は入りますね。
――NOLOVさんの地元は、どんな感じのところだったんですか?
NOLOV 「まじで街がない」っていう感じで(笑)。僕は山のてっぺんに住んでて、その下は海。総人口は2千人とかで。CDも、すごくメジャーなものしか売ってなかったです。だから、そういう地元のやつらには「大丈夫だって。東京行っちゃえよ」って思います。
ASHTRAY 音楽スタジオとか、ないんでしょ?
NOLOV うん。だからバンドのやつらは、ラブホの和室で練習するんですよ。僕はそれを「大変だなあ」って見てました(笑)。でも、ほんと音楽って、本人次第でできるんですよ。何かに頼らなくても、やっちゃえばできることですから。今はインターネットもあるから、それは尚更ですけど。
――JABBA DA FOOTBALL CLUBの活動から刺激を受けて、自分でも何かを始める下の世代が、いずれ出てくるかもしれないですね。
NOLOV そういうやつらが現れてくれたら、ほんと嬉しいですけど。
BAOBAB MC 僕もそうなったら嬉しいなと思って曲を作ったり、ギターを弾いてます。「誰かコピーしてくれるのかもしれない」とか思いながらやってるところはあるので。僕もX JAPANのHIDEさんに憧れてましたからね。