《マジのガチだぜ》って、自然に出たので、「これで行きます」と。シンプルな言葉じゃないと伝わんないですから(NOLOV)
――“新世界”は、サウンドもすごく刺激的ですね。ドヴォルザークの、あの有名なメロディを使っていて、驚きました。
NOLOV 「こういうことをやる!?」っていうのをやるところが、僕らなんじゃないかなって思ってます(笑)。でも、勇気も必要でした。「大ネタ使うんだったら、どこまでやれんだよ?」っていうのがあるので。音楽の理論的に無理っていうようなことも言われてたんですけど、完成度が高いものになったと思います。
――壮大なサウンドと、こめられた想いが、すごくリンクしていると思いました。
NOLOV はい。飛び込んでみる前に考えたり、シミュレーションすることって、実際に飛び込んでみると無意味じゃないですか。だから「実際に飛び込んでみて、どうにかしてもいいんじゃない?」ってことですね。今までの経験だけで考えててもわからないことも、実際にやってみたら「そういうことね」ってなるし。この曲で《マジのガチだぜ》って言ってるのは、それがマジのガチだからです。
――《マジのガチだぜ》って、すごくインパクトのある表現ですよね。
NOLOV 2秒で考えました(笑)。《マジのガチだぜ》って、自然に出たので、「これで行きます」と。やっぱ、シンプルな言葉じゃないと伝わんないですから。
――みなさんそれぞれのパートで、個性が出ているのも面白いですね。ASHTRAYさんが《パクチー》と《コリアンダー》を使って表現しているのとか、すごくウィットに富んでいて、粋だなと思いました。
ASHTRAY 《俺食えないんだ 苦手なパクチー》で始めたら、僕らのことを知らない人も、「何言ってんだ?」ってなると思うし、そこから耳を傾けてもらって、本当に伝えたいところが届いたらいいなと思ってるんです。
――こういう言葉遊びって、ラップの面白さのひとつですね。
NOLOV アメリカのヒップホップとかは、すごく知的レベルが高いですけどね。比喩表現が8個くらい入ってきたりするから。
――日本のヒップホップも、今後、より言葉遊びの面が進化していくんですかね?
NOLOV 10年、20年先になると「わかりづらい表現のようで、わかる!」みたいな空気になってくるのかもしれないですけど。でも、今は直接的な表現をするトラップも流行ってるし、MCバトルもあるし、すごくカオスなんです。「上手さ」や「面白さ」っていうことに関して何かハッキリしたものがあるわけじゃなくて、「あっちにはあの面白さがあって、こっちにはこういう面白さがある」みたいな感じなんですよね。だから、そういうのがさらに一回りしたら何かがビルドアップされるのかもしれない。自分たちは、そういうことをやってるつもりでもあります。「ないものを作りたい」っていうのがありますから。
――みなさんも上の世代に憧れるところから音楽を始めたと思うんですけど、いろいろな経験を積んでいる内に自ずと「ないものを作りたい」という気持ちが強まってきた面もあるのでは?
NOLOV そうなんでしょうね。俺らはFG感(FGとはFUNKY GRAMMAR UNITの略称。RHYMESTER、EAST END、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、MELLOW YELLOWが所属していたヒップホップクルー)があるって言われてたけど、音楽性としてのそういうものは前々作までだったと思ってるんです。バンドサウンドっていうものも落とし込んで「ミクスチャーロック」というよりも「ミクスチャー」ってなってるところに自信を持つようになってるので。今って、ロックバンドの人たちとかも、いろんなことをやるようになってるし、すごく面白いですよ。
メジャーに行ったことによって、やりたいイメージの具現化を諦めるようなことは少なくなっていくんでしょうね(BAOBAB MC)
――JABBA DA FOOTBALL CLUBは、ヒップホップグループ以外とも一緒にライブをやったりしていますけど、ジャンルの垣根みたいなのがなくなってきていると感じます?
NOLOV 垣根はなくなってないっぽいですけどね。例えばアイドルとロックバンドが対バンしたりも今はありますけど、それぞれのファンは交わってないと思うから。やってる側は楽しいけど、どっちのグループも好きで、一緒にやるのを求めてるお客さんって、そんなに多くない気がするんですよ。僕らにもそういう機会がありますけど、両方求めてるのって、多分、2%とかくらい。だから垣根がなくなっていくっていうのは、まだまだここからなんだろうなって思ってます。
――みなさんの曲の“月にタッチ”は、Tempalayの“革命前夜”をサンプリングしていましたけど、ああいう曲は、バンドの音楽が好きなリスナーにも新鮮な刺激を届けたんだと思いますよ。
NOLOV 僕らとしては狙ったわけではなくて、自然なことだったんですけどね。あの曲をやった時、僕らもTempalayもインディーだったから自然にできたっていうのもあるんだろうし。こういうのは、昔で言えば小沢健二とスチャダラパーみたいなトップの人たち同士の規模でやったらとしたら、また何か違った印象になるんでしょうけど。だから“今夜はブギー・バック”みたいなレベルのヒット曲が生まれた時に、「垣根がなくなる」っていうものになっていくんだと思います。まあでも、僕らとしてはジャンルの垣根を壊そうとかはなくて、「聴いてくんないかな。すげえいいぜ」っていうことだけなんですけど。
――今作の3曲目にORANGE RANGEのNAOTOさんがリミックスした“i&i”も収録されていますけど、こういうのも幅広い人に興味を持ってもらえるきっかけになるんじゃないですかね。
NOLOV NAOTOさんにリミックスしてもらって、ほんと嬉しいんですよ。ORANGE RANGE、大好きだから。こんなことが起こり得るのがメジャー!(笑)。
BAOBAB MC メジャーに行ったことによって、やりたいイメージの具現化を諦めるようなことは少なくなっていくんでしょうね。
NOLOV まあ、環境が良くなったからといって、良くなっていくとは限らないのが音楽なんですけど(笑)。だから、工夫はなくさないようにしたいです。
――ROVINさんは、今後、どうなっていきたいと思っています?
ROVIN めちゃめちゃヒット曲を作って、めちゃめちゃ売れたいです。それだけです。
ASHTRAY めちゃめちゃモテたいというのはないの?
ROVIN めちゃめちゃヒットしたらモテちゃうんじゃないの?(笑)。
NOLOV 僕ら、紅白も出たいんですよ。ビジョンとかって言葉にするのは難しいですけど、そういうことに向かっても突っ走っていきたいです。紅白って、じいちゃん、ばあちゃんも喜ぶし。だから中途半端じゃ終われないです。
ASHTRAY だからよろしければみなさんに“新世界”を聴いてもらって、ツアーにも来てもらって、過去作も聴いてもらいたいです。
ROVIN ほんと、そんだけだよね?
BAOBAB MC うん。ほんとそんだけ(笑)。
NOLOV よろしければグッズも買ってほしい。それだけなんです。欲張りすぎても良くないので(笑)。