日本一オメでたい人情ラウドロックバンド「オメでたい頭でなにより」が、最新シングルのタイトル曲“乾杯トゥモロー”のテーマとしたのは「乾杯」。仲間たちと杯を交し合い、共に時を過ごす喜びが描かれている。何度も繰り返される印象的なワード、効果的に盛り込まれているイタリアの大衆歌曲“フニクリ・フニクラ”のメロディが強烈だ。センスのいい笑いの要素で彩りながら、メッセージをまっすぐにリスナーに届けるこの曲は、オメでたの本質の塊と言っていいだろう。個性豊かなカップリング曲も収録されている今作について、赤飯(Vo)、ぽにきんぐだむ(G・Vo)、324(G)に語ってもらった。
インタビュー:田中大
みんなで円陣を組んで、ゆっくりと中心に向かって「かんぱ~い!」ってするイメージです(赤飯)
――今年に入ってから、目に見えてファンの輪が広がっていますよね。
赤飯 その通りなんですよ。ツアーも回りましたけど、「そんなにワンマンを求められてたのか!」って思いました。
324 前までは「対バンを積極的にやって広げてこうぜ」っていうスタンスだったから、ツアーは自信になりましたね。
ぽにきんぐだむ 「ワンマンの尺のライブを求められてた」っていうことも感じました。
――ファミリーで楽しんでいただけるようにもなっていますよね。
赤飯 はい。ファミリー層に刺さるバンドだなんて考えたことはなかったんですけど。
――オメでたって、昭和のファミリー層が、ドリフのコントとかで笑っていたような雰囲気に通ずるものがあると思います。
ぽにきんぐだむ バカ殿みたいなノリですね。
赤飯 PTAから怒られてなんぼみたいな(笑)。
324 子供たちは、ラウドと思って聴いてないかもしれないね?
ぽにきんぐだむ うん。普通の音量の音楽では満足できない体になってしまうかも(笑)。
――(笑)赤飯さんは、マキシマム ザ ホルモン2号店「コロナナモレモモ」のボーカリストとしての活動も始まりましたね。
赤飯 はい。マキシマム ザ ホルモンは、大学時代からコピーしてたバンドですからね。公式に認めていただいて、みなさんの前で胸張ってやれるのが嬉しいです。本店への恩返しもしたいですし、関わってるみんながハッピーにならないと意味がないということを心に留めて活動してます。
――オメでたへの注目度が、いろんな形で高まっている中、リリースされるのが今作というわけですね。タイトル曲“乾杯トゥモロー”のテーマは乾杯?
324 そうです。いつかやりたいと思っていたテーマのひとつなんですよ。そのテーマを踏まえつつ、「ライブでどういう風景を作りたいか?」ということをイメージして作りました。
赤飯 参加してもらって、一緒に空間を作るっていうことをイメージしてます。フェスって、モッシュが禁止されてるとこが多いですけど、「たくさんの人と一緒に何かをやる」っていう体験はできる場所だと思うんです。そういうことができる素晴らしさを、いろんな人に知ってもらいたいです。“乾杯トゥモロー”は、みんなで円陣を組んで、ゆっくりと中心に向かって「かんぱ~い!」ってするイメージですね。
――みんなで《Cin Cin》と叫ぶ風景も浮かびます。
赤飯 ぜひ、一緒に大声で言ってほしいです。
――《Cin Cin》とは、歌詞で説明されている通りイタリア語で「乾杯」ですが、発音は日本語に置き換えると「チンチン」ですね。
赤飯 はい。フェスでやったら、何万人規模で《Cin Cin》と言えるわけですよ。
――ちゃんとしたイタリア語なんですから、《Cin Cin》と叫ぶのに、なんの躊躇も要らないのが、実にありがたいです。
324 遠慮せずに《Cin Cin》と言っていいんです。ハッピーな意味なんですから。
赤飯 やはりオメでたは、みんなの夢を叶えるバンドなので。
324 法律の抜け穴を探してるバンドみたいな気もしてくるけど……。
ぽにきんぐだむ 詐欺師みたい(笑)。
――(笑)CDジャケットの右上に印刷されている家紋風のマークは、眺めているとなんとも言えないモゾモゾした気持ちになるんですが。
ぽにきんぐだむ 何か気づいた人は、そう思っていただければと(笑)。
我々のやり方で笑ってもらって、それをきっかけにして、あなたがより楽しくなる生き方をしてください(赤飯)
――ユーモラスな要素も満載されているのに、聴いている内に感動しちゃうのが、“乾杯トゥモロー”の不思議さなんですよ。こういう曲になっている理由とは、なんなんでしょう?
赤飯 結局、オメでたは、真面目なことを言いたいから、バカなことをやってるんです。理由は、そこですね。真面目なこととバカなことのバランス感が、今回、最初の段階では難しかったんですよ。言いたい真面目なことは決まってるけど、どうやってバカなことをしたらいいのかわからなくて。でも、“フニクリ・フニクラ”のメロディを全部《Cin Cin》にして、それをど頭に持ってくるっていう爆弾のアイディアを彼(ぽにきんぐだむ)が出してくれたことで、一気に道が拓けました。
ぽにきんぐだむ メッセージとボケの匙加減で悩んだ末だったんですけど。
赤飯 すべては《Cin Cin》のおかげです。
ぽにきんぐだむ 最初は、世界各国のいろんな「乾杯」の意味の言葉を“フニクリ・フニクラ”にのせて、最後が《Cin Cin》だったんですけど、例えばフェスの現場で途中から来た人も、ずっと《Cin Cin》の方がわかりやすいし、参加しやすいですからね。
――「真面目なことを言いたいから、バカなことをやってる」っていうのは、オメでたを語る上で大事なポイントではないでしょうか? この前のツアーの時、赤飯さんはMCで「この世は立ち止まってるといろんな不幸が降り注いでくるから」って、おっしゃっていたじゃないですか。そういう世界だからこそ、「幸せになりたい」という意思を持つきっかけを作りたいって。
赤飯 はい。自分たちから面白いものを探していかないと、勝手に状況はどんどん悪くなっちゃうというか。何もないというのも地獄だと思いますし。だから、「積極的に楽しいものを探していこう」っていうメッセージは、根本にあります。
324 高杉晋作も「おもしろきこともなき世をおもしろく」と言ってますからね。僕の髪形、実は高杉晋作を意識してます。
赤飯 関係あるかい!
324 適当なこと言いました(笑)。
――(笑)面白くできる人って、偉いですよね?
赤飯 その通りです。笑わせられるやつが、いちばんかっこいいって思ってます。だから我々のやり方で笑ってもらって、それをきっかけにして、あなたがより楽しくなる生き方をしてくださいっていうことなんです。
――この前のアルバム(1月にリリースされた『オメでたい頭でなにより1』)の曲から挙げるならば、“ザ・レジスタンス”でも表現されていたスピリットですね。こういうものが核にあるから、オメでたのライブで感動して涙を流すお客さんがいるんだと思います。
赤飯 笑いと涙って、正反対のようで、どこか密接に関係してるんですよ。僕も打首獄門同好会の武道館の時、ボロ泣きしましたから。
――“乾杯トゥモロー”は、そういうバンドならではの曲だと思います。「つらいこともあるけど、お互いに明るくやっていきましょう」っていうメッセージが、まっすぐに伝わってきますから。
赤飯 そうなんです。これは《Cin Cin》という包装紙に包んだ大事なメッセージソングです。
――包装紙の《Cin Cin》に過剰に反応する人に対して、何か言いたいことは?
赤飯 イタリア語なんですから、違った意味で解釈する人は、心が汚れてます(笑)。