(“浄化”は)腱鞘炎まっしぐらみたいな(笑)。でも、こういう呆気にとられるような曲があってもおもしろいかなって(mafumafu)
──皆さんのプレイヤビリティが思いきり炸裂してるのが“浄化”。ドラマティックな鍵盤からゴリゴリのアンサンブルに突入するんですが、どうやってできていったんですか?
mafumafu これも結構昔にセッションの流れでできた曲なんですけど、今回のアルバムに入れるにあたって、テンポをバカみたいに上げてみようって。ギター入ってなくてピアノトリオ編成なんですけど。
mura☆jun マラソンみたいなことやりました(笑)。
mafumafu それで限界が見えて「ここでやめよう」みたいな。
yui 演奏がみんなかなり速いよね。スラッシュ。
mura☆jun スラップ(笑)。
yui スラップ(笑)。
mafumafu 全員が速い(笑)。息できないみたいな。
yui だからこの曲と“時計”とかを続けて演奏すれば、mafumafuは完全に腕が痛いです(笑)。
mafumafu 腱鞘炎まっしぐらみたいな(笑)。でも、こういう呆気にとられるような曲があってもおもしろいかなって。
──歌詞では、《誰の為だとか自分の為だとか/戦う必要あるのかな》《目の前にある/小さな幸せ/気付かずに過ごしてる》と。戦わない選択肢もある中で、どう心を強く持って前進できるかということが歌われていて。大人だからこその問題の向き合い方というか。
yui この曲は仮タイトルを“ガンダム”ってつけてたんですけど(笑)。私は『攻殻機動隊』のアニメのイメージがあって。歌詞を書いていく中で、平和を願うというか。昔『プライベート・ライアン』とか観た時に、かなり衝撃ですごく悲しかったりして。あと、10代の時に読んだ小説で、海外の女の人が、悲しいことが起きたところに行って怪我の処置をする話があって。その人の言葉がすごく胸に残ってて。《一雫》って歌詞にも入ってるんですけど、「一雫何もしないと本当に何も起きない。でも少しでも誰かが手をあげたとしたら、それが何かに関連していくかもしれない。広がっていくかもしれない。それはやってみないとわからない」っていうようなことが最後に書かれてて、ずっと残ってたんです。そのことと、戦いがない世界になったらいいなっていう思いが合わさって歌詞ができていきましたね。
ポップなのにみんなの変態性がちゃんと出てる。これがナチュラルにできるようになってきてるのがすごい(yui)
──セッションというところでいうと、“ベン”はジャズセッション的な曲で。レコーディング現場でのyuiさんの発言や、犬の鳴き真似みたいな声もそのまま入ってて。
yui これもすごいおもしろかったんだよね。冒頭の「わんわん」って声は最初入ってなかったんですけど、隠しトラックにしてたのをmura☆junに見つかって。
mura☆jun それを1曲の中に入れて、みんなに聴かせたら「ええやん」みたいな。
yui それでこんな感じで吹っ切れてしまいました(笑)。“熱いアイツ”でかなり遊んでるので。
mura☆jun うん、もう1曲くらいはこういう方の力抜けてる曲があった方がいいかなって。でも、バンドは楽器で戦ったりしてるっていう曲があった方が聴き応えがあるなって思って。
yui ポップなのにみんなの変態性がちゃんと出てるよね。これがナチュラルにできるようになってきてるのがすごいなって思いました。
──なんでベンだったんですか?
yui ベン・フォールズ・ファイヴのベンですね。この前、mura☆junが海外行った時に、WEEZERのレコード買って来てくれて。それで、私、10代、20代の時にべン・フォールズとかレッチリとかWEEZERを聴いてたんで、青春だなって話になって。その時にみんな「ベン・フォールズ聴いてた」って言ってて。
sacchan ファースト出た時衝撃だったもん。
mura☆jun そういえば“ベン”って、初めて仮タイトルがそのまま本タイトルに昇格した曲だね。
yui そうか。ピアノの弾き方も衝撃で。眼鏡が鼻のあたりまで落ちてて汗だくなのに、こうやってメガネの上から覗きこむように見てるんですよ。すいません、マニアックで(笑)。
──(笑)。《歌詞なんか/読まない/意味なんて/知らない/けど残っている》と。それこそ音楽ってそういうものなのかなと。
mura☆jun まさに。
yui ちょっと少女が歌ってるイメージで書いていったんです。「意味は知らない、でも聴いてる」みたいな。でもずっと残り続けてるってことには意味があるって思います。
──演奏面での進化と、伸び伸びと遊んでる感じが自然と混在してるのが、大きな変化だと思いました。
mura☆jun 確かに、「いい曲たくさん並べよう!」みたいな気張った感じがあまり感じられないですもんね。
yui 今までで一番みんな肩の力が抜けて、なおかつちゃんと意志の強さが込められた気がします。
――バンドの活動期間も7年位になってきて。そもそもyuiさんがFLOWER FLOWERを結成した当初の「自由に音楽に取り組みたい」という気持ちが、どんどん達成できているんじゃないでしょうか?
yui そういう意味では、結成の時に、私sacchanに電話して「ファンクやれる?」って訊いたらしいんですけど。いつかsacchanに「そう言われたんだよ?」って言われて。でも私は覚えてないから「え、ファンクって何?」って(笑)。でも今回やっと“熱いアイツ”で、私が言ったであろうファンクをやっと達成できたかなって。
sacchan 電話で「Fのファンクだよね?」って何度か確認して(笑)。それで最初のうち、割とヘビーなファンクをmafumafuと演奏していたら、「私ファンクわからない……」と(笑)。
yui・mura☆jun・mafumafu (笑)。
sacchan そう言われて、いいバンドだなって僕は思いました(笑)。
──でも、みんながどう出るかわからないのもこのバンドのおもしろさだと思うので(笑)。
mafumafu ああ、そうだと思います。
yui 私が「ファンクわからない」って言った時、sacchan、「yuiちゃんが言ったんだよ?(笑)」ってめっちゃ笑ってましたけどね。「あ、そうだったんだ」って。よくこの私と一緒にやってくれてるなってほんと思います(笑)。
mura☆jun・mafumafu・sacchan (笑)。